浅見又蔵

浅見又蔵

浅見又蔵（あさみ またぞう、天保10年8月16日〈1839年9月23日〉 - 明治33年〈1900年〉4月21日）は、滋賀県出身の実業家であり、地域社会の発展に大きく貢献した人物です。太湖汽船会社社長、第21国立銀行頭取・第64国立銀行頭取などを歴任し、経済界を牽引する一方で、篤志家として様々な支援活動を行い、晩年は日本赤十字社の活動にも積極的に関わりました。

生涯

天保10年（1839年）、近江国坂田郡長浜宮町（現在の滋賀県長浜市神戸町）で、薬種問屋を営む若森彦右衛門の三男として生まれました。幼名は得御寅吉。12歳で京都の呉服商・土田家に奉公に出た後、播州明石の伊藤家の養子となりますが、半年で解消。万延元年（1860年）に長浜で縮緬製造を営む浅見又之助の養子となり、家業を継ぎました。当初は養父と同じく浅見又之助と名乗っていましたが、後に又蔵と改名しました。

事業家としての活躍

又蔵は家業である「浜ちりめん」の育成・特産化に尽力し、その販路を国内外に広げました。博覧会への出品や輸出を積極的に行い、浜ちりめん業界の発展に大きく貢献。業界の指導者として、その手腕を発揮しました。

また、長浜の有力者として、区長、町会議員、県会議員、長浜町長といった公職を歴任し、長浜の発展に尽力しました。琵琶湖の湖上輸送を推進し、長浜港の整備に尽力。太湖汽船の社長に就任し、その経営を担いました。さらに、長浜の経済基盤を確立するため、第21国立銀行の設立に尽力し、頭取に就任。経営難に陥っていた第64国立銀行（大津）の再建にも協力し、その手腕を発揮しました。

篤志家としての活動

又蔵は篤志家としても知られ、困窮者や被災者への支援を積極的に行いました。東京在住の彦根藩士のために住宅地を開発したり、長浜大火の際には備蓄米を放出して被災者を支援するなど、私財を投じて様々な支援活動を行いました。博愛社への度重なる寄付が評価され、博愛病院の開院式典では皇后から言葉を賜るという栄誉にも浴しました。これらの活動が認められ、佩有功章特別社員に推挙され、晩年は日本赤十字社滋賀支部の幹事や会計監査などを務めました。

教育への貢献

滋賀県第一（開知）小学校（現長浜市立長浜小学校）や滋賀商業学校（現滋賀県立八幡商業高等学校）の設立にも積極的に関わり、地域社会の教育水準の向上に貢献しました。明治20年（1887年）には、明治天皇・皇后が琵琶湖を経由して長浜に行幸された際、私費を投じて迎賓館「慶雲館」を建設し、休憩所として提供しました。

浅見又蔵は、実業家として地域経済の発展に貢献する一方で、篤志家として社会福祉や教育にも尽力し、地域社会に多大な貢献を果たした人物として、その功績は今も語り継がれています。

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