浅見泰司

浅見泰司

浅見 泰司（あさみ やすし）は、1960年に東京都で生まれた日本の都市工学者です。特に都市における居住システム、空間情報解析、都市住宅論などを専門とし、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻の教授を務めています。都市の抱える様々な課題に対し、数理的な手法や空間情報科学を駆使して解明と解決を目指す研究を行っています。

経歴

浅見氏は、1982年に東京大学工学部都市工学科を卒業しました。その後、同大学院工学系研究科都市工学専攻の修士課程を1984年に修了。さらに研鑽を積むため渡米し、1987年にはペンシルベニア大学より地域科学（Regional Science）の分野で博士号（Ph.D.）を取得しています。この際の指導教員は、後に京都大学やスタンフォード大学でも教鞭をとった著名な経済学者、藤田昌久氏でした。

博士号取得後、母校である東京大学に戻り、研究者としてのキャリアをスタートさせます。工学部都市工学科の助手、講師、助教授を務めた後、大学院工学系研究科都市工学専攻の助教授に就任。2001年からは東京大学空間情報科学研究センター（CSIS）の教授となり、2005年から2010年には副センター長、2010年から2014年にはセンター長を務めるなど、同センターの運営においても指導的な役割を果たしました。2012年からは、現在の東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻の教授を務めており、2014年時点では空間情報科学研究センターの教授も兼任していました。また、2020年には日本計画行政学会の会長に就任するなど、学界における要職も歴任しています。

研究分野と社会活動

浅見氏の研究は、都市における人間の居住や活動、そしてそれが織りなす空間構造を、データに基づき厳密に分析することに特徴があります。居住システムのモデリングや評価、地理情報システム（GIS）を用いた空間データの高度な解析、都市住宅市場の分析、住民の行動や心理が都市環境に与える影響の解明、都市形態の数理的解析など、幅広いテーマに取り組んでいます。

学術研究の枠を超え、社会に対する積極的な貢献も行っています。内閣府の規制改革会議委員や国土交通省の社会資本整備審議会委員など、国の重要政策の策定に関わる委員会のメンバーとして、専門的な立場から提言を行っています。特に、社会資本整備審議会では安全・安心まちづくり小委員会で委員長を務めた経験もあります。その他、国土交通省の国土政策検討委員会や持続可能なまちづくり研究会など、多くの政策立案・評価に関与しています。さらに、不動産流通経営協会の既存住宅の流通促進に関する研究会で座長を務めるなど、実務界における課題解決にも深く関与しています。また、NHK「クローズアップ現代」やテレビ朝日「ワイド!スクランブル」といったメディアにも出演し、専門的な知見を広く社会に発信しています。

浅見氏は、日本不動産学会、日本オペレーションズ・リサーチ学会、日本都市計画学会、日本計画行政学会、日本地域学会、都市住宅学会、地理情報システム学会、日本建築学会など、都市工学および関連分野の主要な学会に数多く所属し、研究活動を推進しています。

主要な業績

浅見氏は、その優れた研究成果に対して数々の学術賞を受賞しています。

日本不動産学会: 研究奨励賞、著作賞、論文賞、論説賞など多数受賞。
都市住宅学会: 著作賞、論文賞、論説賞など多数受賞。
日本地域学会: 著作賞など。
資産評価政策学会: 論説賞、著作賞。
日本都市計画学会: 年間優秀論文賞、論文賞。
その他、Planning and Urban GOLD STARSなどの国際的な賞も受賞しています。

これらの受賞は、浅見氏の研究が学術的に高く評価されている証拠です。

主要な著作としては、編著・共著を含め多くの書籍を出版しています。特に、『住環境―評価方法と理論』（東京大学出版会）、『マンション建替え―老朽化にどう備えるか』（日本評論社）、『人口減少下のインフラ整備』（東京大学出版会）などは、その分野における重要な文献として知られています。

学術論文も国内外の主要なジャーナルに多数発表しており、都市工学、地域科学、空間情報科学といった分野の研究発展に大きく貢献しています。例えば、"An Axiomatic Approach to a Measure of Land Use Mixture" (1989) や "A Determination of Bid Rents Through Bidding Procedures" (1990) など、影響力の大きい論文を多数発表しています。

浅見泰司氏は、都市工学分野における理論と実践の両面から、日本の都市の未来に貢献し続けている第一人者の一人と言えるでしょう。

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