浅野健一

浅野健一：日本のジャーナリズムに鋭い視線を注ぎ続けるジャーナリスト

浅野健一氏は、1948年香川県高松市生まれのジャーナリストである。慶應義塾大学経済学部卒業後、共同通信社に入社。同社において記者、外信部デスク、ジャカルタ支局長などを歴任した。

彼のキャリアにおいて特筆すべきは、1989年から1992年にかけて務めたジャカルタ支局長時代の経験である。当時、インドネシアはスハルト政権下にあったが、浅野氏は同政権を批判する記事を執筆した。その結果、国外追放という厳しい措置を受けた。この経験は、彼のジャーナリストとしての姿勢、権力への批判精神を象徴する出来事と言えるだろう。

共同通信社退社後、1994年から同志社大学文学部社会学科教授（新聞学専攻）に就任。その後、同大学大学院文学研究科新聞学専攻博士課程教授、社会学部メディア学科教授を歴任し、2014年に定年退職した。大学教授としての在職中には、後進の育成にも尽力し、数多くの学生たちにジャーナリズムの精神を伝えた。

浅野氏は、メディアにおける客観性や倫理、人権問題など、幅広いテーマを扱った著作を多数発表している。代表的な著書には、『犯罪報道の犯罪』『客観報道　隠されるニュースソース』『メディア・ファシズムの時代』『戦争報道の犯罪』などがある。これらの著書は、日本のメディア社会の問題点を鋭く指摘し、社会的な議論を喚起する役割を果たしてきた。

彼の著作は、単にメディアの問題点を指摘するにとどまらず、具体的な事例を提示しながら、より良い報道、より公正な社会の実現に向けて提言を行っている点が特徴的である。たとえば、『犯罪報道の犯罪』では、犯罪報道における偏向性や人権侵害の問題点を詳細に分析し、改善策を提案している。また、『客観報道　隠されるニュースソース』では、報道における情報源の重要性や、隠された情報を取り上げる必要性を訴えている。

浅野氏の活動は、大手メディアでの執筆にとどまらない。月刊誌『創』への寄稿をはじめ、『社会新報』『朝鮮新報』『救援』といった、多様な媒体を通して、自身の考えを発信し続けている。さらに、イラク国際戦犯民衆法廷の呼びかけ人として名を連ねるなど、国際的な視点からも社会問題に取り組んでいる。

八尾恵の冤罪事件への関与も特筆に値する。有本恵子の拉致に関わったと疑われた八尾恵が冤罪を主張した際、浅野氏は彼女の救援活動に乗り出した。後に八尾は有本の誘拐を認め謝罪したものの、浅野氏の行動は、社会正義への強い信念を示すものだったと言える。

近年では、選択的夫婦別姓制度導入への賛同を表明し、「100年後に正しいと判断される」と発言している。この発言からも、彼の社会に対する先見性と、変革への強い意志が見て取れる。

浅野健一氏のジャーナリストとしての活動は、単に情報を伝えるだけでなく、社会に問題提起し、議論を促し、より良い社会の実現を目指した、積極的なものと言える。彼の著作や発言は、日本のジャーナリズム、ひいては社会全体の進歩に貢献してきたと評価できるだろう。彼の活動は、これからの日本のメディアや社会を考える上で、重要な示唆を与えてくれるものとなっている。

もう一度検索