イラク国際戦犯民衆法廷

イラク国際戦犯民衆法廷

イラク国際戦犯民衆法廷（ICTI）は、2003年のイラク戦争に反対する立場から、戦争の違法性や人道に反する行為を告発するために行われた、模擬裁判の形式による抗議活動です。この「法廷」は、市民団体や法律家、研究者らが中心となって組織され、イラク侵攻に関与した各国の指導者たちを「被告」として、その責任を追及しました。

概要

ICTIは、国際人道法の重大な違反を犯したとされる個人を対象に、市民の手で「判決」を下すことを目的としていました。ただし、主催者側も「法廷」という用語の持つ意味合いについては慎重で、報道機関もこの点を踏まえ、ICTIを固有名詞として扱い、パフォーマンスとしての側面を強調していました。

イラク世界法廷（WTI）と連携し、日本を中心に公聴会や公判が開かれましたが、フィリピンや韓国などでも開催が予定されていました。2005年3月にはイラク世界法廷の場で「判決」が発表されましたが、主要メディアが大きく報道することはほとんどありませんでした。

構成

ICTIは、実際の法廷を模した構成で行われました。

被告人
ジョージ・W・ブッシュ（アメリカ合衆国大統領）
トニー・ブレア（イギリス首相）
小泉純一郎（日本首相）
グロリア・M・アロヨ（フィリピン大統領）
弁護人
アミカス・キュリエ制度が採用され、弁護人は立てられませんでした。
大久保賢一弁護士ら5名がアミカス・キュリエ（法廷助言人）として参加しました。
判事
阿部浩己（神奈川大学法学部教授：国際人権法）
申惠丰（青山学院大学法学部助教授：国際人権法）
李長煕（韓国外国語大学法学部長：国際人権法）
ジョンソン・パンジャイタン（インドネシア：弁護士）
検事
ロメオ・T・カプロン（フィリピン・弁護士、旧ユーゴスラビア特別法廷非常任判事）が検事団長を務めました。
岩佐英夫弁護士、菅野昭夫弁護士が副団長を務めました。
その他、国内外の弁護士や研究者が検事として参加しました。
事務局
裁判部及び検事の事務をサポートしました。

起訴状

起訴状は以下の内容で構成されていました。

序　イラク攻撃に至る経過
第1章　イラク攻撃
第2章　イラク占領
第3章　被抑留者への拷問
第4章　ファルージャの虐殺
第5章　小泉首相の犯罪

日程

第一回公判：2004年7月17日
第二回公判：2004年7月18日（起訴状の提出）
結審：2004年12月11日、12日（東京）
判決：2005年3月5日（イスタンブール、イラク世界法廷の場で発表）

判決内容

ICTIは、被告とされた人物に対し、以下の様な「判決」を下しました。

ジョージ・W・ブッシュ大統領
侵略の罪：有罪
戦争犯罪：一部無罪、一部有罪
ジェノサイドに関わった罪：有罪
人道に対する罪：有罪
トニー・ブレア首相
侵略の罪：有罪
戦争犯罪：一部無罪、一部有罪
ジェノサイドに関わった罪：有罪
小泉純一郎首相
侵略の罪：有罪
戦争犯罪の幇助と支援の罪：有罪
ファルージャ虐殺の幇助と支援の罪：一部無罪、一部有罪
グロリア・M・アロヨ大統領
侵略の罪：有罪

意義と評価

イラク国際戦犯民衆法廷は、イラク戦争の違法性や人道的な問題点を告発し、国際社会に警鐘を鳴らすという点で一定の役割を果たしました。しかし、その法的根拠や手続きの正当性、メディアの報道姿勢などについては、様々な議論がありました。あくまで模擬裁判という形式であり、法的拘束力はありませんでしたが、戦争に対する市民の意思表示として、その意義を評価する意見もあります。

関連項目

民衆法廷
アフガニスタン国際戦犯民衆法廷
* イラク世界法廷

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