浅野泰治郎

浅野泰治郎：苦境を乗り越え浅野財閥を再建した二代目総帥

浅野泰治郎（あさの たいじろう）は、1884年7月5日に生まれ、1947年11月29日に没した日本の実業家です。浅野財閥の創始者である浅野総一郎の長男として生まれ、父の死後、二代目浅野総一郎を襲名し、財閥を率いました。

若き日の研鑽と事業承継

早稲田大学商科を卒業後、泰治郎はセメント業の研究のため欧米を視察。 широкое 父の死後、1930年に浅野財閥の総帥に就任しますが、実務は弟の浅野良三に委ねることが多かったようです。人物評としては、先代の独裁的な性格とは対照的に温和で、長老のような風格があったと評されています。

財閥再建への道

浅野総一郎の死後、浅野財閥は安田財閥傘下の銀行からの多額の借金を抱え経営危機に瀕していました。泰治郎は、安田財閥の支援を受けながら、大胆な事業再編に乗り出します。具体的には、以下の施策を実施しました。

事業の整理・統合: 浅野セメントが日本セメントと土佐セメントを吸収合併、磐城炭鉱が第二磐城炭鉱を吸収合併するなど、グループ企業の統合を進めました。
事業の売却: 国策に従い発電設備を日本発送電に売却、神奈川コークスを東京瓦斯に売却するなど、資産の売却も行いました。また、富士製鋼を日本製鐵結成に参加させ、大島製鋼所を日曹製鋼に売却するなど、不採算事業からの撤退も進めました。
経営再建: 東洋汽船の経営再建のため、東洋証券を設立して安田銀行からの借入金を肩代わりさせ、東洋海運を設立して東洋汽船の船舶を定期貸船にするなどの対策を講じました。

これらの施策により、浅野財閥は経営の立て直しに成功しました。

その他の事業と役職

泰治郎は、浅野財閥傘下の多くの企業の役員を兼任しました。磐城炭鉱、小倉製鋼、関東水力電気などの会長を務めたほか、浅野同族、浅野興業、室蘭埋築などの社長も務めました。また、浅野総合中学校の理事長を務めるなど、教育分野にも貢献しました。1942年にはセメント統制会長に就任し、業界の発展にも尽力しました。

多彩な趣味と家族

泰治郎は、弓術や盆栽を趣味とし、文化的な一面も持ち合わせていました。妻は板垣退助の四女である浅野千代子。長男の浅野一治は東京帝国大学を卒業後、財閥を支え、五男の浅野五郎は後に浅野財閥の三代目総帥となりました。

浅野泰治郎は、苦境にあった浅野財閥を見事に再建し、その後の発展の礎を築いた人物として、日本の経済史に名を残しています。

参考文献

齋藤憲『稼ぐに追いつく貧乏なし : 浅野総一郎と浅野財閥』東洋経済新報社、1998年

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