浜田宏一

浜田宏一

日本の経済学者、浜田宏一（1936年1月8日生まれ）は、国際金融論とゲーム理論を専門とし、特に国際金融分野へのゲーム理論応用で世界的に知られる業績を上げた人物です。東京大学およびイェール大学の名誉教授であり、計量経済学会（Econometric Society）の終身フェローでもあります。

学歴とキャリア

東京に生まれた浜田氏は、東京大学法学部を卒業後、経済学部に学士入学し学びを深めました。大学院で経済学修士号を取得後、フルブライト奨学生としてイェール大学へ留学。そこで、ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・トービン教授に師事しました。トービンからは、先行研究に囚われず自ら思考することの重要性を教えられ、その指導は浜田氏の研究姿勢に深く影響を与えました。また、国際経済学における「宇沢＝浜田の命題」を発表するなど、学術的な貢献も行っています。

イェール大学で博士号を取得後、東京大学経済学部で教鞭をとり、教授に昇任。その後、イェール大学の教授に就任し、日米双方で教育・研究活動を行いました。理論・計量経済学会（現日本経済学会）会長、法と経済学会初代会長、内閣府経済社会総合研究所長など、様々な要職も歴任しています。

経済政策論

浜田氏の政策論の核心は、日本経済の「失われた10年」の主因を1990年代後半以降の金融政策の失敗に求める点にあります。当時の日本銀行によるデフレへの対応を厳しく批判し、積極的な金融緩和による物価上昇（リフレーション）こそが経済再生に不可欠であると強く主張してきました。エコノミストの岩田規久男氏らリフレ派の論者と立場を同じくしています。

2012年、第二次安倍政権が発足すると、内閣官房参与に就任し、アベノミクスの理論的支柱として政策決定に深く関与しました。アベノミクスについては、大胆な金融緩和の効果を高く評価する一方、成長戦略については遅れているとし、規制緩和や法人税減税といった供給サイドの改革の重要性を訴えました。アベノミクスによる景気回復が当初トリクルダウンの側面を持っていたことを認めつつも、経済活性化が雇用や賃金にも波及しつつあるとの見解を示しました。

構造改革の必要性も強く主張し、非効率な政策を批判。竹中平蔵氏の改革思想への賛同を表明しています。また、日本の法人税実効税率が国際的に見て高いとして、大幅な引き下げと規制緩和をセットで行うべきだと提唱しました。

日銀の物価目標については2%を適切とする一方、過度なインフレは国民に負担を強いることになると警鐘を鳴らしました。また、日本銀行法の改正にも言及し、目標達成に向けた説明責任を果たす必要性を強調しています。

批判と影響

浜田氏の積極的な金融緩和への主張は、他の経済学者からの批判も呼びました。例えば、一橋大学の齊藤誠教授からの批判に対し、浜田氏は自身の理論が現実経済に即していると反論しました。

国際金融論からマクロ経済政策に至るまで、幅広い分野で多数の著作や学術論文を発表しており、その研究成果は国内外で高く評価されています。また、元日銀総裁の白川方明氏をはじめ、多くの著名な人材を育成しました。

日本の経済政策論争において、特にデフレ脱却と金融政策のあり方について大きな影響力を持った人物であり、その発言は常に注目を集めています。

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