浦嶋幸世

浦嶋 幸世（うらしま ゆきとし）

日本の著名な地球科学者であり、特に鉱床学の分野で顕著な業績を残しました。1924年8月25日に北海道夕張郡で生まれ、2022年2月3日にその生涯を閉じました。

経歴

1950年に北海道大学理学部地質学鉱物学教室を卒業後、同大学で助手、助教授として教育・研究に従事しました。1970年には鹿児島大学教養部教授として赴任し、1990年まで約20年間にわたり、後進の指導と研究活動に情熱を注ぎました。この間、1959年には北海道大学に提出した「北海道北東部の金属鉱床の研究」（鴻之舞鉱山をはじめとする鉱床に関する調査研究）により理学博士の学位を取得しています。

研究活動と主な業績

浦嶋幸世の研究の根幹には、自身が所属する大学が立地する地域の鉱床を丹念に調査するという揺るぎない姿勢がありました。現地での綿密な踏査を基本とし、採集した鉱石の詳細な観察を重ね、後年には電子線微小部分分析装置（EPMA）を用いた鉱物分析を導入することで、鉱床がどのようにして形成されたのか、その過程を深く探求しました。

こうした研究活動の中で、特筆すべき業績の一つとして、元素鉱物である「自然ルテニウム」の発見が挙げられます。

また、鹿児島大学在任中には、南薩地域に分布する金鉱床の研究に力を注ぎました。この地域の金鉱床が、北薩地域に典型的に見られる鉱脈型金銀鉱床とは異なる独自の特性を持っていることを明らかにし、これを「南薩型金鉱床」と名付けました。さらに、このタイプの鉱床においては、珪化作用を受けてできた岩石が、もともとの原岩の性質に影響を受けながら水平方向に連続し、その断面がきのこのような形状を示すことを指摘しました。この「南薩型金鉱床」に関する研究は、その後の高硫化型金鉱床という鉱床タイプの概念として世界的に広く受け入れられる基礎となり、世界の金鉱床探査の方向性にも大きな貢献をもたらしました。

研究室を離れてからも、金属鉱業事業団が推進する広域調査事業において指導的な役割を果たし、国内最大級の金鉱山である菱刈鉱山の発見に貢献するなど、探査実務の分野においてもその知識と経験を活かしました。

教育、地域貢献、学会活動

浦嶋幸世は研究者としてだけでなく、教育者としても多大な貢献をしました。定年退職後、新たに開設された鹿児島大学総合研究博物館には、現役時代に収集・整理した貴重な鉱石や岩石の試資料を多数寄贈・登録しました。これらの資料は、日本列島の金鉱石とそれを取り囲む母岩の時代別分布を視覚的に示す、他に類を見ない展示として活用されており、地域の教育・文化活動にも大きく寄与しています。

長年の教育と地域への貢献は高く評価されており、その顕著な研究業績と学会への貢献が認められ、資源地質学会の名誉会員に推挙されています。

主な編著書

* 浦島幸世「かごしま文庫10　金山 - 鹿児島は日本一」、春苑堂出版、1993年。ISBN 4-915093-15-8

結び

浦嶋幸世は、地域に根差した緻密な調査研究を基盤とし、新鉱物の発見や世界的にも重要な鉱床タイプの概念提唱に至るまで、鉱床学の発展に深く貢献しました。また、教育者として多くの人材を育成し、収集した資料を地域に還元するなど、その功績は学術分野に留まらず、教育、地域文化の振興にも及びます。その生涯は、日本の地球科学史において重要な足跡を残しました。

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