菱刈鉱山

菱刈鉱山：日本が誇る金鉱山

菱刈鉱山は、鹿児島県伊佐市菱刈地区東部に位置する、日本で唯一商業規模で操業されている金鉱山です。その歴史は古く、江戸時代から金が産出されていた地域で、1981年に住友金属鉱山によって鉱脈が発見されました。1985年から本格的な採掘が開始され、現在に至るまで日本国内の金の生産を支える重要な役割を担っています。

驚異的な金の埋蔵量と産出量

菱刈鉱山の特徴は、その驚異的な金の埋蔵量と産出量です。推定埋蔵量は250トンとされ、これは日本の他の主要な金鉱山をすべて合わせた量を上回ります。また、鉱石中に含まれる金の含有量も非常に高く、一般的な鉱山の約8倍にもなります。このため、菱刈鉱山は年間で国内産金量の9割以上を生産しており、日本の金産出を牽引しています。

1997年には、累計産金量が佐渡金山を抜き、日本一の金産出量を誇る鉱山となりました。その後も調査が進められ、2012年には時価1300億円相当の新たな金鉱脈が発見されるなど、その埋蔵量はさらに増加しています。

高品位な金鉱石

菱刈鉱山で採掘される金鉱石は、非常に高品位であることが特徴です。一般的な金鉱石の品位は数グラム/トンですが、菱刈鉱山の鉱石は平均で約40グラム/トン、場所によっては290グラム/トンに達することもあります。これは世界平均の約10倍であり、世界でも有数の高品位な金鉱山として知られています。この高品位な金鉱床は、マグマの活動に伴う熱水の活動によって形成された「浅熱水性鉱脈型金銀鉱床」であると推定されています。

最新技術の導入と運営

菱刈鉱山では、最新の技術が導入され、効率的な採掘が行われています。従来の鉱山で使われていた鉱内鉄道やトロッコではなく、当初からダンプカーで鉱石を搬出するトラックレス・マイニング方式が採用されています。また、鉱山内では65℃の温泉が湧出しており、一部は湯之尾温泉に供給されています。ただし、湯之尾温泉では、鉱山採掘以前に存在した間欠泉が枯渇し、地盤沈下も発生したため、温泉宿は別の場所に移転しました。

現在、菱刈鉱山は住友金属鉱山の技術者養成の場としての機能も兼ね備えており、約60名の従業員が働いています。掘られた坑道の総延長は100キロメートル以上に及び、坑口は標高265メートルですが、海抜マイナス50メートルまで掘削されています。2020年3月時点の累計産金量は248.2トンに達しています。

採掘された鉱石は選別された後、住友金属鉱山東予工場に運ばれて製錬されます。その後、「コンフリクトフリー」の認証を受け、紛争鉱物ではないことを示して出荷されます。

一般人の立ち入りは禁止

菱刈鉱山は、現在も年間6トンもの金を産出する、商業ベースで大規模な操業が行われている日本唯一の現役金鉱山です。そのため、一般人の見学や立ち入りは許可されていません。

菱刈鉱山に関連する情報

菱刈鉱山の金脈発見は、住友金属鉱山の仕手戦へと繋がったことでも知られています。また、菱刈鉱山の情報は、テレビ番組「日経スペシャル ガイアの夜明け」でも取り上げられました。


菱刈鉱山は、日本の金生産を支えるだけでなく、世界の鉱山業界においても注目される存在です。

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