浦川原村

かつて新潟県の南西部に位置し、東頸城郡に属していた村、それが浦川原村（うらがわらむら）です。周囲を山々に囲まれた自然豊かな地域でした。村は2005年1月1日に上越市に編入され、その区域は現在、地域自治区である「浦川原区」として引き継がれています。平成12年国勢調査時点では、住民の23.4%が近隣の上越市へ通勤していました。

地理的には、村の中央部を保倉川が流れていました。この河川は、地域の生活や農業に深く関わる重要な存在でした。浦川原村が隣接していた自治体は、北には中頸城郡吉川町、西には中頸城郡頸城村および三和村、南には東頸城郡牧村と安塚町、そして東には同じく東頸城郡の大島村がありました。

浦川原村の自治体としての歴史は、昭和の大合併を契機に始まります。村が発足したのは1955年（昭和30年）3月31日です。この時、それまで存在した東頸城郡下保倉村が、同じく東頸城郡安塚村から分離・編入された一部地域（大字中猪子田、下猪子田、上猪子田、小谷島、虫川、小蒲生田、横住、真光寺、谷、法定寺、熊沢）と合併する形で、新たな自治体、浦川原村が誕生しました。その後、1961年（昭和36年）4月1日には、隣接する東頸城郡牧村の一部区域が編入され、村域が少し拡大しました。村はそれから約44年間、単独の自治体として行政運営を行いましたが、平成の大合併の流れの中で、2005年（平成17年）1月1日に上越市へ編入されることとなりました。これにより、浦川原村としての自治体としての歴史は終わりを告げ、現在は上越市の地域自治区「浦川原区」として新たな歩みを進めています。

地域の教育を担う施設として、村内には小学校が複数ありました。浦川原村立下保倉小学校、浦川原村立末広小学校、浦川原村立中保倉小学校があり、子どもたちが学んでいました。また、進学先として浦川原村立浦川原中学校が設置されており、地域の教育体系を構成していました。

交通の面では、村内を縦断する主要な道路と鉄道が、地域内外とのアクセスを支えていました。鉄道路線としては、北越急行ほくほく線が走り、村内にうらがわら駅と虫川大杉駅という二つの駅が設けられていました。これらの駅は、地域住民の通勤・通学や、後述する観光地へのアクセス手段として利用されていました。道路網では、主要幹線である国道253号が村内を通り、上越市中心部や東頸城地域の各方面への重要なルートとなっていました。これらの交通インフラは、村の経済活動や住民生活にとって不可欠な要素でした。

浦川原村は、豊かな自然と歴史に育まれた多様な名所旧跡や観光スポットを有していました。古くから地域を見守ってきた寺院としては、顕聖寺、日光寺、法定寺などがあります。特に法定寺周辺は、村の発足の基礎となった地域の一つです。自然が創り出した驚異としては、国の天然記念物に指定されている「虫川の大杉」が挙げられます。樹齢千年を超えるとされるその巨大な姿は、訪れる人々に深い感銘を与えました。秋には、地域の特産品であるぶどうを味わえる山本ぶどう園が賑わいました。また、癒しの空間として、霧ケ岳温泉「ゆあみ」があり、ここではユニークなコシヒカリアイスが名物として人気を集めていました。温泉施設に隣接する霧ケ岳公園は、四季折々の自然を楽しむことができる場所でした。年間を通じて、地域住民が一体となって開催する様々な祭事・催しも魅力でした。春の若葉まつり、夏のうらがわらまつり、秋の山本ぶどう祭りや農業祭は、地域の伝統や文化を次世代に伝える大切な機会でした。冬には雪国ならではの雪上カーニバルが開催され、厳しい寒さの中でも地域に賑わいをもたらしました。これらの観光資源やイベントは、浦川原村の個性を際立たせ、多くの人々を惹きつけました。

浦川原村は行政区分としては消滅しましたが、その豊かな自然環境、歴史的な背景、育まれてきた文化や伝統は、現在の新潟県上越市浦川原区として確かに引き継がれています。かつての村の記憶は、今も地域の風景の中や、そこで暮らす人々の心の中に息づいています。

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