浮川和宣

浮川 和宣（うきがわ かずのり）

日本のプログラマであり実業家である浮川和宣は、1949年5月5日に愛媛県新居浜市に生まれました。同氏は、日本語ワープロソフト「一太郎」の開発者、そして株式会社ジャストシステムの創業者として広く知られています。

機械系エンジニアの父と市役所勤めの母のもとで育った浮川氏は、地元の新居浜市立東中学校、愛媛県立新居浜西高等学校を経て、愛媛大学工学部電気工学科に進学しました。大学時代には、後の妻であり、ジャストシステムの共同創業者となる橋本初子氏と出会っています。初子氏は当時、同大学同学部電子工学科における唯一の女子学生でした。

1973年3月に大学を卒業した後、二人はそれぞれ異なる道を歩み始めます。初子氏は高千穂バローズ（現在のBIPROGY）の相模原研究所へ、浮川氏は東京芝浦電気（現在の東芝）グループの西芝電機に入社しました。その後、1975年に結婚した初子氏は職場を退職し、浮川氏の勤務先がある姫路市の社宅に移り住むことになりました。

姫路に移った初子氏は、地元の小規模なオフィスコンピュータシステム販売会社に再就職します。その中で妻のビジネスにおける才能を見抜いた浮川氏は、独立を決意します。1979年に西芝電機を退職し、故郷に近い徳島に戻った浮川氏は、同年7月、初子氏とともに徳島市内にあった初子氏の実家の一室を拠点として、オフィスコンピュータシステムの販売を手がける「ジャストシステム」を創業しました。会社は順調に成長し、1981年6月には株式会社化を果たしています。

創業間もない時期から、浮川氏と初子氏はコンピュータの日本語処理機能の開発に注力しました。特に、当時の8ビットパソコン上で動作するかな漢字変換システムの開発は画期的な取り組みであり、これを実現させたことは、その後のジャストシステムの飛躍の礎となりました。1982年10月、開発したシステムを東京の展示会に出展したところ、NECの技術者の目に留まり、ワープロソフトの開発を受注する機会を得ます。

この受注を契機に、本格的なワープロソフト開発に乗り出したジャストシステムは、当初はアスキーの下請けとして開発を進めましたが、やがて自社開発・販売へと転換します。そして1985年8月、日本語ワープロソフト「一太郎」が発売されました。「一太郎」は瞬く間に日本のパソコン市場を席巻する大ヒット商品となり、ジャストシステムの名を全国に知らしめることになります。浮川氏は、「スペースキーを押して漢字に変換し、再度スペースキーを押すことで次の候補を表示する」という、現在ではごく当たり前となった日本語入力方法の基礎を考案した人物としても評価されています。

「一太郎」の成功により、浮川氏はソフトウェア業界のリーダーとしての地位を確立し、業界団体の要職も歴任しました。1990年6月には日本パーソナルコンピューターソフトウェア協会（JPSA）の会長に就任。その後も1991年9月にはコンピュータソフトウェア著作権協会（ACCS）の副理事長、2000年6月にはJPSA（現コンピュータソフトウェア協会）の理事を務め、業界の発展に貢献しました。さらに、2002年6月には内閣府の総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会の委員に選ばれるなど、公的な分野でもその知見を活かしています。

しかし、ジャストシステムはその後、経営上の課題に直面します。2009年4月には経営不振により、精密計測機器メーカーであるキーエンスの傘下に入ることとなりました。これに伴い、同年6月に浮川氏はジャストシステムの社長職を福良伴昭氏に譲り、代表取締役会長に就任します。そして同年10月には会長職も辞任し、長年牽引してきたジャストシステムの役員を退くこととなりました。

ジャストシステムを離れた浮川氏は、立ち止まることなく新たな挑戦へと向かいます。2009年10月30日には、夫人である初子氏とともに、新たに株式会社MetaMoJiを設立。現在も、先進的なソフトウェア開発を通じて活動を続けています。

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