浮沈特火点

浮沈特火点（ふちんとっかてん）

浮沈特火点、またはマルトは、大日本帝国陸軍が開発した試作の水中砲台です。この装置は、主に敵の上陸用舟艇部隊に対して奇襲攻撃を行うための決戦兵器として設計されました。その名にある「特火点」はトーチカという概念を表しており、基地防御の一環としての重要性を示しています。

概要

浮沈特火点は普段、海面下30メートルの位置で静止していることが想定されています。敵の襲撃があった際には、敵部隊の接近に合わせて浮上し、備えられた砲で攻撃を実施するという運用方法が計画されていました。

この装置は、直径2.5メートルのドラム缶の形状をしており、波切板と安定板を備えています。その上部には防盾を装着した艇砲が1門搭載されており、20mmまたは37mmの口径を選択できるようになっています。全没する際の排水量は7トンです。

動作に必要な機能は、手動による錨捲上機を使った潜水と、高圧手動ポンプを利用した浮力水槽の管理による浮上のみで、動力による航行はできません。このため、内部には2名の乗員が48時間の間、海中で待機することができる設計になっています。通常は無人で海中に配置され、敵が接近する際に浮上して乗員が乗り込むという手順が考えられていました。

また、浮沈特火点には基本型のほかに、無線機を搭載した浮沈特火点二型、さらに無線機と浮遊水雷の敷設機能を持つ浮沈特火点三型など、3つのサブタイプが計画されていました。

開発の経緯

この装置の開発は1945年1月29日に開始され、同年の5月末には川崎車輛で試作機が完成しました。その後、神戸港にて試験が行われましたが、海軍の反対を受け、陸軍と海軍の共同での量産は実現しませんでした。試験に参加したのは三式潜航輸送艇の乗員で、彼らが操作要員として関与しました。

そのため、浮沈特火点は量産には至らず、試作の段階で終わることとなりました。しかし、その設計や機能は、当時の戦況においては非常に革新的なものであったと言えるでしょう。

参考文献

• - 松原茂生、遠藤昭『陸軍船舶戦争』星雲社、1996年、274-276,337,338頁。ISBN 4795246335。

関連項目

• - 大日本帝国陸軍兵器一覧

このように浮沈特火点は、技術的には優れた試作品でありながら、時代の波に流されて消えていってしまった悲劇的な側面を持っています。

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