海上五十狭茅

五十狭茅宿禰（いさちのすくね）とは

五十狭茅宿禰は、古墳時代に活躍した豪族の一人です。
『日本書紀』では五十狭茅宿禰、『国造本紀』では伊狭知直、『古事記』では伊佐比宿禰と、異なる表記が見られます。

概要

『古事記』と『日本書紀』の両方に記述があり、建部氏の祖である倉見別王と共に、麛坂皇子と忍熊皇子側について、神功皇后と応神天皇の軍勢と戦った将軍として描かれています。この戦いで敗れた後、『古事記』では、忍熊王と共に海に入水したとされ、『日本書紀』では、瀬田の渡りに沈んだとされています。これらの記述から、五十狭茅宿禰は、この時点で自害したと考えられています。

しかし、『日本書紀』の神功皇后摂政紀には、神功皇后の命令によって稚日女尊を活田長狭国に祀ったという記述もあり、矛盾点も見られます。
また、『先代旧事本紀』国造本紀では、胸刺国造の祖であるとされています。

名前の「五十」の部分は、皇室関係の古い名にも見られますが、その意味は正確にはわかっていません。

系譜

五十狭茅宿禰の父は、初代武蔵国造の兄多毛比命です。
兄弟には、初代菊麻国造の大鹿国直、初代大島国造の穴倭古直、初代伯岐国造の大八木足尼がいます。これらの系譜から、五十狭茅宿禰が、当時の有力な豪族の一族であったことが伺えます。

五十狭茅宿禰の人物像

五十狭茅宿禰は、神功皇后や応神天皇と敵対した人物として描かれています。しかし、その一方で、稚日女尊を祀ったという記述もあり、必ずしも単純な反逆者とは言い切れない複雑な人物像が垣間見えます。

また、国造の祖であるという伝承も残されており、地域社会においても重要な役割を果たしていたと考えられます。五十狭茅宿禰は、古墳時代の歴史を語る上で、重要な人物の一人であると言えるでしょう。

補足

麛坂皇子（かごさかのみこ）：応神天皇の兄。
忍熊皇子（おしくまのみこ）：応神天皇の異母兄。
建部氏（たけべうじ）：古代の氏族の一つ。
国造（くにのみやつこ）：古代の地方官。

参考文献

『古事記』
『日本書紀』
『先代旧事本紀』

関連項目

国造
* 飛鳥時代以前の人物一覧

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