麛坂皇子

麛坂皇子（かごさかのみこ/かごさかのおうじ）

麛坂皇子は、生年不詳ながら、神功皇后元年に没したとされる古代日本の皇族です。『日本書紀』では「麛坂皇子」または「麛坂王」、『古事記』では「香坂王」と記されています。

系譜

第14代仲哀天皇と、彦人大兄命（大江王）の娘である大中姫（おおなかつひめ、大中比売命）の間に生まれた皇子です。同母弟には忍熊皇子がいます。また、第15代応神天皇の異母兄にあたります。

記録

『日本書紀』と『古事記』によると、新羅征討中に仲哀天皇が崩御し、神功皇后が誉田別尊（後の応神天皇）を産みました。麛坂皇子と忍熊皇子は、幼い皇子に皇位が継承されることを恐れ、共謀して筑紫から凱旋する皇后軍を迎え撃とうとしました。

皇子たちは、仲哀天皇の御陵造営を名目に、播磨赤石（現在の兵庫県明石市）に陣地を構築し、倉見別（犬上君の祖）と五十狭茅宿禰（伊佐比宿禰とも）を将軍として東国の兵を集めました。しかし、菟餓野（大阪市北区兎我野）で反乱の成否を占う祈狩（うけいがり）を行った際、皇子は猪に襲われ、命を落としました。

考証

『日本書紀』と『古事記』に記されている麛坂皇子の反乱説話は、神功皇后の非実在性と同様に史実ではないとする説があります。王朝交替説では、神功・応神説話は古王朝（崇神天皇朝）と中王朝（仁徳天皇朝）を結びつけるものであり、麛坂皇子の説話もその挿話の一つであると考えられています。ただし、王朝交替説自体がまだ明確になっておらず、定説とはなっていません。

麛坂皇子の生涯は、皇位継承を巡る古代日本の権力闘争の一側面を映し出していると言えるでしょう。その短い生涯は、多くの謎に包まれていますが、古代史を研究する上で重要な人物の一人です。

参考文献

亀田隆之「麛坂王」『国史大辞典 第2巻』吉川弘文館、1983年。ISBN 464200503X。
「麛坂皇子」『日本古代氏族人名辞典 普及版』吉川弘文館、2010年。ISBN 978-4642014588。

関連項目

* 忍熊皇子

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