海員閣

海員閣（かいいんかく）

海員閣は、神奈川県横浜市中区山下町に位置する広東料理の専門店で、横浜中華街の一角、香港路に店を構えています。1936年に創業したこの店は、長い歴史を持つ老舗の中華レストランとして広く知られています。最初は外国船の船員を主な客層としており、その名もそこから由来していることが特徴です。

アクセスと営業形態

海員閣は中華街大通りから少し離れた場所に位置しており、かつては平日でも行列ができるほどの人気を誇っていました。しかし、2022年9月からは予約制に移行し、コース料理のみの提供となっています。これは、店舗の運営に新たなスタイルをもたらすものです。

歴史的背景

創業当初、海員閣の料理長は中国出身の張汝琛で、彼の手によって広東料理が提供されていました。2022年には、店主一人による体制へと変更され、再びスタートを切ることとなりました。以前はコークス窯を使用していましたが、維持管理の事情から、2017年にガス火に変更しました。

メニューの特徴

海員閣の魅力の一つは、伝統的な料理の数々です。豚バラや牛バラの煮込み、焼売、車海老の殻煮などが長年にわたり親しまれています。特に豚バラ肉は、塊のまま茹でた後に揚げ、さらに煮込むことで柔らかく仕上げられています。牛バラもまた、八角や桂皮の香辛料とともにじっくりと煮込まれることで、その柔らかさを楽しむことができます。

文化的な影響

海員閣は、著名な映画監督である小津安二郎が愛した店としても知られています。彼の日記には、同店での食事の様子が何度も記されています。サンマーメンや焼売を好んでいた小津は、松竹関係者や友人達と共にリラックスした雰囲気の中で食事を楽しみました。また、貴田庄の著書『小津安二郎の食卓』でも海員閣が取り上げられ、その料理の出所として特別な意味合いを持つと言及されています。

獅子文六のエッセイ『二人の中国料理人』でも張汝琛が紹介されており、同店の味わいは多くの文筆家や文化人に影響を与えました。さらに、漫画『美味しんぼ』でも海員閣がモデルとされる場面があり、温かな雰囲気を持つ店として描かれています。

最近の出来事

2020年には新型コロナウイルスの影響で、中国人を中傷する匿名の手紙が店舗に届くという事件もありましたが、その後、SNS上での応援や「料理を食べて支援しよう」という動きが広まりました。こうした支援の流れは、海員閣に訪れる多くの人々がその存在を大切に思っていることを物語っています。

結論

海員閣は、横浜中華街の中心に位置し、ただ美味しい料理を提供するだけでなく、文化的な交流と歴史を持つ場でもあります。その伝統の味を楽しみながら、訪れる人々に新たな体験を提供し続けています。

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