海女 (韓国)

韓国済州島の海女：歴史、文化、そして課題

韓国済州島に伝わる海女（ヘニョ）は、素潜りで貝や海藻などを採取する女性漁師です。その歴史は古く、5世紀まで遡るとの説もあり、当初は男性が行っていたとされています。しかし、17世紀以降、女性による素潜り漁が盛んになり、18世紀には男性を上回るほどになりました。

19世紀後半には、済州島の海女たちは朝鮮半島本土、さらには中国、ロシア沿海州、日本へと活動範囲を広げ、1970年には14000人を超える海女が活躍していました。しかし、高齢化による減少が深刻で、2012年末には4574人にまで減少。その8割が60歳以上という現状です。現在、潜水漁業従事者の所得向上や操業環境改善が課題となっています。

済州島の海女たちは、日本の鳥羽市や輪島市の海人たちと交流を持ち、互いに技術や文化を共有しています。済州海女文化は、独自の技術、海の生態系に関する深い知識、そして海女の安全を祈願する儀式などを含む豊かな文化として、2012年に韓国の無形文化遺産に登録されました。さらに、2016年には国連教育科学文化機関（UNESCO）の無形文化遺産にも登録され、2023年には国連食糧農業機関（FAO）の世界農業遺産にも登録されるなど、国際的に高く評価されています。

しかし、海女を取り巻く状況は決して楽観視できるものではありません。2015年のSBSスペシャルでは、韓国における海女の認識と、日本の海女の認識との違いが報道されました。韓国では、海女は経済的機会の少なかった女性にとって、唯一の経済活動の場だったという認識がある一方、日本では海女は一つの職業として認識されていると指摘されています。番組では、日本の海女の待遇が韓国よりもはるかに良いこと、また、韓国国内での収入が少なく、日本への出稼ぎを余儀なくされる海女の現状が紹介されました。

さらに、2019年には深刻な問題が発覚しました。韓国国内の補償金制度を悪用し、男性や海に潜った経験のない女性が不正に海女として登録し、高額な補償金を受け取っていたのです。蔚山蔚州郡では、村長を含む130人以上が不正に登録し、14億ウォン近い補償金を得ていたことが明らかになり、漁業補償ブローカーの存在も発覚しました。この事件は、海女を取り巻く社会問題の深刻さを改めて浮き彫りにしました。

済州島の海女文化は、韓国の伝統と文化を象徴する重要な存在です。その歴史と文化を後世に伝えるとともに、高齢化や不正受給問題といった課題に適切に対処し、持続可能な形で海女文化を守り、発展させていくことが求められています。そのためには、海女たちの生活環境や経済状況の改善、そして不正行為の抑止策など、多角的な取り組みが必要不可欠です。済州島の海女たちが、これからも豊かな海と共に生き続け、その伝統文化を継承していくために、私たち一人ひとりが関心を持ち、理解を深めていくことが重要です。

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