海東村の口碑・傳説

海東村の口碑・傳説

海東村は熊本県の中部に位置しており、現在の宇城市海東地区に該当します。この地域には、古くからの口碑や伝説が数多く残っており、1952年に発行された「海東村史」には10の逸話が収められています。また、1922年に発行された「下益城郡誌」には、元寇で名を馳せた竹崎季長の墓や古戦場として知られる九万ケ迫、さらには虎御前や源為朝にまつわる話といった伝説も紹介されています。これらの伝説は、地域の歴史や文化を知る上で欠かせない貴重な資料となっています。

九万ケ迫

九万ケ迫は、北海東白岩区に位置する小山畠です。この地は古戦場として名高く、過去には大軍の激しい戦闘により、屍山と血河が広がる悲惨な状況が繰り広げられたといわれています。この戦いの名残は今でも残っており、耕作をする農民たちが人骨を掘り出すことがあると伝えられています。訪れた者は、時折遠くから戦の音や馬の蹄の響きを聞くことができるともいわれ、当時を偲ぶ想像を掻き立てます。

虎御前

虎御前という小塚が九万ケ迫の近くにあります。激戦の最中、一人の女性が味方の勝利を祈りながら隠れていました。しかし、味方の状況が厳しくなり、彼女は自ら戦場に飛び込もうとした矢先、敵の矢に命を奪われてしまいました。この場所は、彼女を弔うための塚として今に残されています。

城跡

南海東早迫区にある小川町との村境に近い場所に高い絶壁があり、源為朝がここに居城を築こうとしたという伝説が伝わっています。彼は対岸から矢を放ち、その結果、居城に適さないと判断し、工事を中止したとされています。この伝説は、地域の人々の間で語り継がれています。

塔之瀬

塔之瀬は砂川中流に位置しており、かつてこの地に大堰堤を築く工事が行われていましたが、困難を極めました。そこで近くの寺院にある塔を供養し、その塔を運んで堰の最難所に埋めたところ、工事が成功したとのことから名付けられたと伝えられています。

舟橋

舟橋は、西海東地域の上流橋付近に位置し、昔は砂川を利用して船が行き来していたことからこの名前がつきました。地域の人々は古くから舟運を利用しており、この地名がその名残であることが窺えます。

八つ江の堤

この堤には大蛇が住んでいたという伝説があります。この大蛇は美しい女性に化け、近くの医者と結婚し、その後玉のような男の子を授かったという話が伝わっています。

七つ瀬

この地域には悪い大蛇が存在し、それを討伐するために篠原公が立ち上がりました。大蛇を七つに切り裂いたところから地名が付けられたとされています。

嫐迫の由来

昔、ここには一軒の家があり、息子に嫁を取りました。しかし、祝宴の最中に七人の白装束をまとった者たちが乱入し、皿を打ち割ったことからこの地域は「嫐（わなり）」と名付けられました。

やくさん原の次郎狐

やくさん原には次郎狐と呼ばれる狐が多く住んでおり、次郎狐は参宮しながらだましの秘伝を習ったとされています。このような狐の伝説は地域の文化と精神性を示しているといえるでしょう。

彼岸の川原祭由来

海東神社近くでは、過去に大量の河童が人や家畜をさらっていたという伝説があります。力士の子供が河童に命を奪われた際、彼は河童大将を呼び出し、闘うことになりました。この話は村人々の間で語り継がれ、毎年春には祭りが行われるようになりました。

これらの伝説や逸話は、海東村の歴史的背景を豊かにし、地域を訪れる人々にとって興味深いストーリーとなっているのです。

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