海洋地形学の物語

イエス『海洋地形学の物語』：深遠なるプログレッシブ・ロックの世界

『海洋地形学の物語』（Tales from Topographic Oceans）は、1973年にイエスが発表した7作目のアルバムであり、初の2枚組作品。ジョン・アンダーソン、スティーヴ・ハウ、クリス・スクワイア、リック・ウェイクマン、アラン・ホワイトという黄金期のメンバーによって制作されました。

制作の背景

アルバムの着想は、1973年の日本公演中にジョン・アンダーソンが読んだ、ヒンドゥー教のヨーガ指導者パラマハンサ・ヨガナンダの自伝『ヨーガ行者の自叙伝』から得られました。アンダーソンは、この本から触発され、ハウとの共同作業でアルバムの構想を練り上げました。

音楽的な特徴

アルバムは、各ディスクの片面に1曲ずつ、計4曲という構成で、1曲あたり20分前後にも及ぶ大作です。前作『危機』以上に、歌詞や曲想は幻想的で抽象的なものとなり、より深遠な世界観を表現しています。各メンバーの高度な演奏技術と、複雑に絡み合うアンサンブルは、プログレッシブ・ロックの極致とも言えるでしょう。

しかし、その難解さゆえに、メンバー間でも意見の相違がありました。特にリック・ウェイクマンは、収録曲の長さや内容の難解さに強く異議を唱え、最終的な制作には参加しませんでした。ウェイクマンは、本作のツアー後にイエスを脱退し、その後も本作に対する不満を公言しています。

リリースの遅延とジャケット・アート

イギリスでの発売は1973年10月26日に告知されましたが、メンバー間の不和が影響したのか、実際には11月半ばまでずれ込みました。ジャケット・アートには、メンバーの誕生日の星座が描かれています。

収録曲

ディスク1

A面: 神の啓示 - "The Revealing Science of God (Dance of the Dawn)"
B面: 追憶 - "The Remembering (High the Memory)"

ディスク2

C面: 古代文明 - "The Ancient (Giants under the Sun)"
D面: 儀式 - "Ritual (Nous sommes du soleil)"

2003年にはリマスター盤が発売され、「神の啓示」のイントロが追加されたほか、音質が向上しました。また、以下の2曲のボーナス・トラックが追加収録されています。

ダンス・オブ・ザ・ドーン (スタジオ・ラン・スルー)
ジャイアンツ・アンダー・ザ・サン (スタジオ・ラン・スルー)

参加メンバー

ジョン・アンダーソン – ボーカル、アコースティックギター、パーカッション
スティーヴ・ハウ – ギター、エレクトリック・ギター、バッキング・ボーカル
クリス・スクワイア – ベース、バッキング・ボーカル
リック・ウェイクマン – キーボード
* アラン・ホワイト – ドラムス、パーカッション、バッキング・ボーカル

まとめ

『海洋地形学の物語』は、イエスの作品の中でも特に実験的で、賛否両論が分かれる作品です。しかし、その独創的な音楽性と深遠な世界観は、プログレッシブ・ロックの新たな可能性を切り開いたと言えるでしょう。難解ではありますが、挑戦する価値のある作品であり、聴くたびに新たな発見があるはずです。

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