海洋調査船へりおす遭難事故

海洋調査船「へりおす」沈没事故

1986年6月16日、福島県相馬市沖で発生した海洋調査船「へりおす」の沈没事故は、乗員9人全員が命を落とした痛ましい事件でした。この事故は「潜水艇支援調査船へりおす遭難事件」としても知られています。

事故の発生前の経緯

「へりおす」は、1985年にミスミグループの駿河精機によって発注され、1986年に竣工した船です。中央部には潜水艇「シーホース」が搭載されており、この船が漁礁調査や一般公開のために使用されていました。1986年6月16日、母港の静岡県清水港を出発し、北海道羽幌港へ向かう途中、福島県いわき市付近で悪天候に見舞われました。

運航管理者からの避難勧告があったにもかかわらず、船はそのまま進行を続け、海岸近くの鵜ノ尾岬沖で消息を絶ちました。海難審判では、消息を絶った時間を桓臣し、沈没の時刻を決定しました。

救助活動とその後の捜索

事故発生の翌日、付近を航行していたフェリーによって無人の救命イカダが発見されました。海上保安庁による捜索の結果、約215メートルの水深に沈没した「へりおす」が発見され、7人の遺体が収容されました。しかし、2人の乗員は依然として行方不明で、最終的に全部で9名の死亡が確認されたのです。

調査と海難審判

海難審判庁は事故原因究明のために、潜水艇撮影のビデオや関係者への聴取、気象データの精査を行いましたが、初めは具体的な証拠を特定することができませんでした。そこで、1987年9月から1990年7月にかけて、海底から船体を引き揚げる作業が実施されました。これは日本初の試みとなりました。

引き揚げられた船体を基に、1989年に仙台で第1回目の審判が開始され、審判の結果、1992年に公式に事故の原因が公表されました。審判では天候悪化と船の開口部の不備が主要な要因とされ、運航管理者と設計課長が責任を問われることとなりました。

その後の影響と慰霊

この事故は当時、報道などで船体そのものの欠陥が指摘されることもありました。事故の影響は大きく、特に船の設計や運行に関する規制の見直しを促す要因ともなりました。また、亡くなった調査員を偲ぶために、鵜ノ尾岬には慰霊碑が建立されています。この事件は、海難の悲劇として多くの人々の記憶に残ることとなりました。

このように、「へりおす」の沈没事故は単なる海難事件にとどまらず、多くの教訓を私たちに与えています。今後も安全な海洋調査を行うための貴重な知見として、事故の詳細が記憶され続けることでしょう。

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