海潮のカツラ

海潮のカツラ（うしおのカツラ）

海潮のカツラは、島根県雲南市大東町中湯石に位置する国の天然記念物です。このカツラの巨木は、地域の人々にとって大切な存在であり、独特の形状と規模で訪れる人々の目を引いています。指定名称の「海潮」は、この地域の旧村名に由来しています。

このカツラは、日原神社の境内に生育しており、神社は奈良時代に存在したとされる「日原社」に関連しています。神社の周辺には「鏡の岩」と呼ばれる岩石があり、光の加減で周囲の景色を映し出すことから、日原神社は「かがみの宮」としても知られています。

海潮のカツラは、斐伊川の支流である赤川の河畔に位置しており、社殿の参道石段の近くに生えています。カツラの木は古くから地元の人々に大切にされてきましたが、かつては県道の傍にあり、往来する車両が近くを通過していました。現在は、県道が新設されて交通量が減少し、カツラは静かな環境の中に佇んでいます。

この巨木は、雌雄異株のカツラの中でも雄株とされており、主幹は朽ち果てていますが、周囲には7本から8本の支幹が豊かに育っています。特に南側の支幹は直立しており、見応えがあります。また、根元からはひこばえと呼ばれる若芽が数多く芽吹き、周囲は実に20メートル近くの巨大な土際を形成しています。その幹の周囲は地上1メートルの地点で約14メートル、樹高はおよそ30メートル、枝張りは40メートルに達します。

海潮のカツラは、日本国内で有数の巨木として評価され、1937年（昭和12年）4月17日に国の天然記念物に指定されました。当初は「海潮村ノかつら」という名称でしたが、1957年（昭和32年）に現在の名称に変更されています。このカツラは、日原神社と地元の人々によって守られ続けています。このカツラにまつわる歴史は、地域の文化と深く結びついています。

日原神社の社務所には、かつてこのカツラの折れた枝から彫られたとされる木彫りの仏像が展示されています。この仏像は、明治維新前の神仏分離の混乱の時代に制作されたものです。海潮のカツラと同様に、地元でのたたら製鉄に関連する御神木としても尊重されており、地域の文化的な背景を色濃く反映しています。

交通アクセス

• - 所在地: 島根県雲南市大東町中湯石1446。
• - 交通: JR木次線の出雲大東駅から雲南市民バスの海潮北回り線・南回り線に乗り、日原橋バス停で下車後、徒歩約5分で到着します。

海潮のカツラは、その美しさと神秘的な存在感で多くの人々を魅了し、地域のシンボルとして今もなお多くの人に親しまれています。

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