斐伊川

斐伊川（ひいかわ）

斐伊川は、島根県東部と鳥取県西部を流れる一級水系であり、その本流は古事記にも「肥河（ひのかわ）」として登場する歴史ある川です。島根県仁多郡奥出雲町の船通山を源流とし、出雲平野を蛇行しながら宍道湖へと注ぎ込みます。その後、宍道湖から大橋川、中海、境水道を経て、日本海へと流れ込む、全長は153kmにも及ぶ大河川です。

地理

斐伊川は、その流れの特性から、上流部、中流部、下流部、そして湖部に区分されます。特筆すべきは、本川が天井[[川]]であることで、日本における代表的な天井[[川]]として知られています。河口部から境水道にかけては、河床勾配が緩やかで水位差がほとんど見られません。また、斐伊川は水防警報河川、本川は洪水予報河川、湖部は水位周知河川に指定されており、防災上の重要性が高いことが伺えます。

斐伊川水系には、島根県飯石郡飯南町の女亀山を源流とする神戸川も含まれます。この二つの川は、出雲平野に建設された斐伊川放水路（全長4.1km）によって結ばれています。

名前

古くは「肥河」や「簸の川」とも呼ばれていた斐伊川。その名前の由来には諸説ありますが、『出雲国風土記』には、樋速日子命がこの地に住んだため「樋（ひ）」と名付けられたという記述があります。また、出雲と伯耆の国境にある鳥髪山（船通山）付近を境に、出雲国を流れる川を「斐伊川」、伯耆国を流れる川を「日野川」とする説も存在します。ヤマタノオロチ伝説に登場する「ひの川」は、斐伊川ではなく、鳥取県の日野川であるという説もあります。

歴史

斐伊川は、古くから度重なる洪水に見舞われてきました。この洪水こそが、ヤマタノオロチ伝説の元になったとする説が有力です。洪水の主な原因は、斐伊川上流が風化しやすい花崗岩質の地域を流れているため、大量の土砂が流れ込みやすいことにあります。さらに、製鉄も洪水を助長した要因の一つです。

山陰地方の山間部では、古くから砂鉄の採取が盛んでした。特に江戸時代中期以降は、鉄穴流し（かんなながし）と呼ばれる手法が積極的に用いられ、花崗岩風化堆積物から鉄を採取していました。この方法は、大量の土砂を川に流し込むため、人為的な土砂流入を爆発的に増加させました。

斐伊川と神戸川は、かつてそれぞれ「出雲大川」、「神門川」と呼ばれ、出雲平野を西に流れ、共に神門水海（現在の神西湖の前身）に注いでいました。しかし、度重なる洪水により川の流れが変わり、流域の住民を苦しめていました。そのため、近世になると、川の流れを人工的に変える「川違え」が行われるようになりました。中でも最大規模の川違えは、寛永12年（1635年）の洪水時に行われ、それまで神門水海を通じて日本海に注いでいた斐伊川を、宍道湖へ注ぐように変更されました。

主な橋梁

斐伊川には、数多くの橋が架かっています。以下に主な橋梁を列挙します。

灘橋
島村橋（沈下橋）
瑞穂大橋
西代橋
井上橋（沈下橋）
北神立橋
からさで大橋
神立橋
南神立橋
山田橋
森坂大橋
三代橋
斐伊川橋（松江自動車道）
里熊大橋
木次大橋
願い橋（沈下橋）
簸上橋
熊谷大橋
上熊橋
高瀬大橋
新引野橋
大宝大橋
猿渡橋
高杉橋
湯村大橋
清嵐橋
八ヶ原橋
川手大橋
小原橋
平田橋
平田大橋
尾原橋
スサノオ大橋
西尾大橋
林原橋
三津池大橋
佐々木橋
広瀬橋
仁多大橋
三成大橋
三成新大橋
奥出雲大橋
たたら大橋
大曲大橋
横田新大橋
吉重橋
横田大橋
エヘン橋

これらの橋は、地域の人々の生活を支える重要なインフラとなっています。

斐伊川水系の河川施設

斐伊川水系には、治水や利水のための様々な河川施設が存在します。これらの施設は、地域住民の安全な生活と、農業用水などの確保に貢献しています。

関連項目

斐伊川堤防桜並木（日本さくら名所100選）
斐伊神社
斐伊川に流るるクシナダ姫の涙（吹奏楽曲）
出雲湯村温泉(斐伊川川底から自然湧出)

外部リンク

宍道湖漁業協同組合
斐伊川 - 島根まるごとミュージアム

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