海軍司令部壕

海軍司令部壕：沖縄戦の記憶を伝える場所

海軍司令部壕は、沖縄戦において大日本帝国海軍の司令部として使用された防空壕です。現在はその一部が一般公開され、周辺は海軍壕公園として整備されています。沖縄県豊見城市と那覇市の境界に位置し、太平洋戦争末期の激戦地であった沖縄の歴史を今に伝えています。

設営の背景

1944年、太平洋戦争末期に戦況が悪化する中、日本軍は沖縄の防衛を強化しました。小禄飛行場（現在の那覇空港）を守るため、その南東に位置する火番森（七四高地）に司令部壕を建設することになりました。1944年8月に着工されましたが、同年10月の十・十空襲後に本格的な工事が始まり、同年12月に完成しました。建設には海軍第226設営隊約3,000名が従事し、つるはしなどの手作業で掘り進められました。当時、周辺には多くの防空壕が建設されましたが、海軍司令部壕は最高軍事機密であったため、民間人は立ち入ることができませんでした。

壕の構造

司令部壕は、全長約450mの枝分かれした坑道といくつかの部屋から構成されています。砲撃に耐えられるよう、重要な部屋はコンクリートや漆喰で補強されており、坑道の壁面には建設時のつるはしの跡が残っています。

主な部屋は以下の通りです。

作戦室：約7.5m²の広さで、作戦立案に使用されました。
幕僚室：約10m²の広さで、幕僚が自決した跡が残っています。
司令官室：壁面には、大田司令官の愛唱歌の墨書が残されています。
暗号室：約17m²の広さで、ここから約2,900通の電報が発信されました。
医療室：約7.5m²の広さで、負傷兵用の2段ベッドが置かれていました。
下士官室、兵員室：壕内に2ヶ所、それぞれ約13m²の広さがあり、兵士の休憩に使用されました。戦闘が激化すると、壕内には4,000名もの兵士が集まり、坑道も事実上の兵員室となっていました。
発電室：壕内に3ヶ所、それぞれ約5m²の広さがあり、発電機が置かれていました。

沖縄戦での役割

1945年1月、大田実海軍中将が沖縄方面根拠地隊司令官として着任し、指揮を執りました。3月下旬からアメリカ軍の本格的な攻撃が始まり、5月には那覇市街地が戦場となりました。海軍は陸軍との合流を試みましたが、アメリカ軍の包囲により断念せざるを得ませんでした。大田司令官は6月6日に辞世の句とともに訣別の電報を打ち、その夜には「沖縄県民斯ク戦ヘリ」の電報を発信し、後事を託しました。6月11日、アメリカ軍は司令部壕に集中攻撃を開始し、同日夜に海軍根拠地隊が玉砕したとの電報が発信されました。6月13日には大田司令官が自決し、小禄地区における組織的な戦闘は終結しました。

戦後の復元と公開

戦後、司令部壕は放置された状態でしたが、1953年に元海軍部隊員によって発見され、遺骨収集が行われました。1970年3月1日には、壕内の一部が復元され、旧海軍司令部壕として一般公開されました。1972年には、周辺が海軍壕公園として整備され、現在に至っています。

現在の様子

現在は沖縄観光コンベンションビューローによって運営管理され、平和学習の場として多くの人が訪れています。周辺には遊具も設置され、地域住民の憩いの場としても親しまれています。また、高台に位置しているため、那覇市内の夜景を見ることができるスポットとしても人気です。

施設情報

営業時間：9:00～17:00（最終受付16:30）
入館料：大人1,000円、小人700円（団体割引あり）

参考文献

豊見城村史戦争編専門部会編『豊見城村史　第6巻戦争編』豊見城村役所、2001年
宮里一夫編著『沖縄旧海軍司令部壕の軌跡』ニライ社、1986年

関連情報

関連項目：防空壕、沖縄戦、大田実
* 外部リンク：旧海軍司令部壕（沖縄観光コンベンションビューロー）
海軍壕公園 - 沖縄県土木建築部都市公園課
一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー

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