海軍対潜学校

海軍機雷学校と海軍対潜学校：機雷戦と対潜戦のスペシャリストを育成した教育機関

旧日本海軍は、機雷や防潜網の敷設・管制、掃海、対潜哨戒・掃討、水中探査といった高度な技術を要する分野の専門家を育成するため、海軍機雷学校（Mine School）と、その改称後の海軍対潜学校（Anti-Submarine School）を設立しました。

設立の背景

日露戦争における機雷戦は、敵味方双方に大きな損害をもたらし、海軍はこの戦訓から機雷戦の重要性を認識しました。当初は水雷学校の教育課程に機雷戦のカリキュラムが組み込まれましたが、潜水艦の実用化が進むにつれて、対潜戦の必要性が高まり、防潜網や管制機雷の研究も始まりました。地中海での船団護衛作戦から、対潜哨戒・掃討術の重要性も認識されましたが、機雷術や対潜術は水雷学校のカリキュラムの一部に過ぎず、十分な教育体制が整っていたとは言えませんでした。

1934年（昭和9年）に各鎮守府に防備戦隊が設置されると、防備人員の確保が課題となり、機雷戦教育の強化が求められるようになりました。海軍は、園田滋大佐の尽力により1940年（昭和15年）に「防備委員会」を立ち上げ、機雷戦専門の学校設立を答申しました。こうして、1941年（昭和16年）3月、海軍機雷学校が誕生しました。

学校の名称を巡っては、「防備学校」という案も出ましたが、防備という用語が戦術用語として広義に過ぎるという理由から、機雷学校に落ち着きました。学校は神奈川県横須賀市久里浜に設置されました。

海軍対潜学校への改称

大東亜戦争（太平洋戦争）後半に入ると、対潜戦闘への関心が高まり、護衛艦艇の大量建造に対応するため、1944年（昭和19年）3月、海軍機雷学校は海軍対潜学校に改称されました。

教育設備としては、100トン型曳船が3隻配備され、ソナー運用の訓練に活用されました。しかし、これらの機材は十分とは言えず、訓練用の海防艦が不足していたという指摘もあります。練習艦として駆逐艦「澤風」も配備されました。

教育課程

海軍機雷学校と海軍対潜学校では、他の術科学校と同様に、以下の4科が設置されました。

高等科：対潜艦艇長や機雷長を養成
普通科：初級将校を養成
特修科：特務士官や准士官を養成
専攻科：高等科修了者を対象とした専門教育

また、兵や下士官も練習生として受け入れ、実践的な訓練を行いました。

終戦とその後

1945年（昭和20年）、本土決戦（決号作戦）に備えて、海軍は術科学校の生徒を繰り上げ卒業させることを決定しました。海軍対潜学校も同年7月15日に閉校し、高等科教育は母体であった海軍水雷学校に編入されました。繰り上げ卒業・修了した学生たちは特攻戦隊に配属されました。

学校の跡地は戦後、海上自衛隊に移管され、艦艇装備研究所が設置されました。その後、一部が法務省に移管され、横浜刑務所横須賀刑務支所（旧横須賀刑務所）や久里浜少年院が建設されました。また、近隣地の一部は運輸省に移管され、港湾技術研究所（現：海上・港湾・航空技術研究所傘下）が立地しました。

沿革

1941年（昭和16年）4月1日：神奈川県横須賀市久里浜に機雷学校設置
1944年（昭和19年）3月25日：「海軍対潜学校」に改称
1945年（昭和20年）7月15日：閉校。高等科学生は水雷学校に編入。繰上げ卒業・修了者は特攻戦隊に派遣。

歴代校長

杉山六蔵 中将：1941年4月1日 -
欠員：1941年7月5日 -
佐藤波蔵 少将：1941年10月20日 -
鍋島俊策 少将：1944年1月20日 -
河野千万城 中将：1945年5月1日 -
木村昌福 少将：1945年6月1日 - 1945年7月15日閉校

参考文献

防衛庁防衛研修所戦史室『海上護衛戦』朝雲新聞社〈戦史叢書〉、1971年。

関連項目

* 第五十一戦隊（対潜訓練隊）

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