海辺の生と死 (映画)

映画『海辺の生と死』

『海辺の生と死』は、2017年7月29日に公開された日本の映画で、太平洋戦争末期の奄美群島・加計呂麻島が舞台です。この映画は、実在の人物である島尾ミホと島尾敏雄の夫妻をモデルにしており、彼らの文学作品も基にしています。映画は監督の越川道夫によって取り上げられ、主演に満島ひかりが4年ぶりに帰ってきたという点が特筆されます。

あらすじ

この物語は、太平洋戦争の終息を迎える時期に、奄美群島のカゲロウ島にやってきた海軍中尉の朔（さく）の物語です。朔は国民学校の代用教員であるトエと出会い、彼女に本を借りることから始まる交流が描かれます。朔は戦争にかかわる一方で、文学や島唄への情熱を持っており、やがて彼とトエはお互いの感情を深め合うようになります。彼らの愛は、空襲や特攻命令という悲劇的な状況の中で試されることになります。

物語は、1963年の広島・長崎への原爆投下後、ついに朔の部隊に特攻命令が下るところから緊迫感が増します。トエは、彼との最後の時を過ごすべく浜辺に急ぎますが、朔は出撃についても触れず去ってしまいます。トエは朔の出陣を見届けようとしますが、結局、彼の部隊は出撃せずに終戦を迎えます。朝、戦争の終わりを知らせる玉音放送が流れる中、トエは幻覚に襲われつつも、現実の町の安全を再確認し、安堵して走り出します。

登場人物

大平トエ（おおひら とえ）

演じるのは満島ひかりであり、彼女のキャラクターはカゲロウ島出身の代用教員です。島唄を重んじる朔との出会いを通じて、自身の感情に目覚めていく様子が描かれます。彼女のお母さんは海女であり、潜水中に事故で亡くなっており、父と二人三脚での生活を送っています。

朔中尉（さく）

永山絢斗によって演じられる朔は、海軍の特攻艇の隊長であり、文系的な人物です。彼は月日が流れる中で、戦争そのものに対する反骨精神を抱きつつ、十分に成熟した精神的な側面も持っています。彼とトエとの関係性も進展します。

隼人少尉（はやと）

朔の部下であり、豪快な性格ですが、朔の恋に対して羨望や嫉妬の感情を抱く一面があります。彼は朔に対して少し反感を持ちながらも、真面目な一面があり、物語を引き締める役割を果たすキャラクターです。

制作背景

この映画を手掛けた越川道夫監督は、20代の頃から島尾夫妻の作品に影響を受けており、彼らの息子とも親交があったといいます。映画化のアイデアは、彼が満島に話したことが始まりであり、作品の構想が具体化されていくこととなります。

撮影は奄美大島を主要なロケーションとしており、特にミホの故郷である加計呂麻島を中心に展開されました。満島は撮影にあたって、実際に奄美の人々との交流を通じて、役を深く理解することに努めました。奄美の自然や文化を表現するため、地元の住民が多数参加したことも、映画の独特な空気感を生み出しました。

公開と評価

映画は2017年7月に公開され、満島の演技に対し高い評価が寄せられました。批評家たちは、その映像美だけでなく、ストーリーの深みや恋愛の描写に感動し、特に満島の存在感が称賛されました。また、TAMA映画賞で最優秀女優賞を受賞するなど、作品は多くの観客に愛されました。

このように『海辺の生と死』は、戦時下の奄美群島で描かれた切ない恋物語として、見る者に深い感動を与える作品です。

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