島尾ミホ

島尾ミホ：愛と狂気の狭間で生きた作家

島尾ミホ（1919年10月24日 - 2007年3月25日）は、日本の小説家であり、その人生は愛と苦悩に満ちていました。彼女は、奄美群島の加計呂麻島で生まれ、太平洋戦争中に、夫となる島尾敏雄と出会います。島尾敏雄は、戦時中、加計呂麻島に駐屯していた第十八震洋特攻隊の隊長でした。

生い立ちと青春時代

1919年、ミホは警察官の父の任地である鹿児島県鹿児島市で生まれました。両親は共に奄美出身で、彼女の家系は琉球時代の支配者階級や、西郷隆盛の妻・愛加那を輩出した家系でした。また、母方の家系は熱心なカトリック信者であり、ミホ自身も幼児洗礼を受けています。生後間もなく奄美大島へ移り、幼少期は叔母に育てられました。その後、加計呂麻島の大平夫妻の養女となり、豊かな自然の中で育ちました。高等女学校時代は、東京で実父と暮らし、植物学者のもとで働くなど、様々な経験を積みました。

島尾敏雄との出会いと結婚

加計呂麻島に戻った後、ミホは1944年に押角国民学校の代用教員となります。その頃、島には海軍特攻隊の基地があり、隊長として赴任してきたのが島尾敏雄でした。二人は出会い、交流を深め、激動の時代を共に生きる決意をします。終戦後、敏雄からのプロポーズを受け、1946年に結婚。神戸で新生活を始め、二児をもうけました。

『死の棘』の妻として

1952年、一家は東京へ移り住みましたが、敏雄の文学活動を通じて知り合った女性との関係が発覚し、ミホは精神的に不安定になります。その苦悩の日々を描いたのが、敏雄の代表作『死の棘』です。ミホは、作中に登場する「妻」のモデルとなり、その壮絶な体験は多くの読者に衝撃を与えました。

奄美への帰還と作家活動

精神的な危機を乗り越えるため、ミホは家族と共に奄美大島へ移住。その後、小説家としての才能を開花させます。1974年には、『海辺の生と死』を発表し、第15回田村俊子賞を受賞。故郷である奄美を舞台に、人間の生と死、愛と苦悩を描いた作品は、高い評価を受けました。

晩年と死

敏雄の死後も、ミホは執筆活動を続け、晩年は奄美大島で静かに暮らしました。2007年3月25日、脳内出血のため87歳で死去。彼女の遺志により、墓は島尾敏雄文学記念碑の奥に、分骨された敏雄の遺骨と共にあります。

島尾ミホの作品は、彼女自身の人生と深く結びついています。愛と狂気、生と死、故郷への想い。彼女の作品は、私たちに生きることの意味を問いかけ、深く感動を与えてくれるでしょう。

主な作品

海辺の生と死
祭り裏
海嘯
愛の棘

参考文献

* 梯久美子『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』新潮社、2016年

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