海野道郎

海野道郎（うみのみちお）は、1945年 1月17日に生まれた日本の社会学者です。数理社会学と環境社会学を主な専門分野とし、長年にわたり教育・研究活動に貢献しました。特に、東北大学で教授として教鞭を執り、現在は名誉教授の称号を得ています。また、学校法人宮城学院においては、宮城学院女子大学の学長や、法人全体の理事長を歴任するなど、教育機関の運営にも深く関わりました。

学歴と職歴

海野氏の学究の道は、当初工学分野から始まりました。1963年に神奈川県立湘南高等学校を卒業後、東京大学工学部工業化学科に進学し、1968年に卒業。さらに同大学大学院工学系研究科工業化学専門課程の修士課程を1970年に修了しました。その後、社会科学へと関心を移し、東京工業大学大学院理工学研究科社会工学専攻の修士課程を1972年に修了。同博士課程には進学しましたが、1973年に中途退学しています。同年、東京工業大学理工学部の助手として研究者のキャリアをスタートさせました。1976年に関西学院大学社会学部に転じ、専任講師、助教授を経て教授を務めました。

1984年からは東北大学文学部社会学科の助教授に着任し、1991年には同教授に昇任。2000年からは大学院文学研究科の教授として、後進の指導と研究の推進に尽力しました。2001年には大学運営にも携わり、東北大学評議員を務めています。2008年に東北大学を定年退職した後も、同大学教養教育院総長特命教授として教育活動を続けました。

東北大学退職後も、教育界での重要な役割を果たしました。2011年には宮城学院女子大学の学長に就任し、2013年からは学校法人宮城学院の学院長代行も兼務しました。学長としての任期を終え、2014年3月末に退任。しかし、その後も学校法人宮城学院との関わりは続き、2016年から理事を務め、2019年11月28日には理事長に就任しました。2022年11月27日、任期満了に伴い理事長職を退任しています。

研究内容

海野氏の研究の中心にあるのは、個人が合理的な選択をしても、集合体として見ると非効率や不公平が生じる「社会的ジレンマ」の構造を解明し、その克服を目指すことです。環境問題における人々の意識や行動、問題発生のメカニズム、あるいは社会における不公平といったテーマを深く掘り下げてきました。これらの研究を進めるにあたっては、数学的なモデル構築による理論分析と、社会調査から得られるデータを統計的に分析する手法を融合させることを重視しています。このようなアプローチを通じて、社会現象をより厳密かつ客観的に捉え、問題の本質に迫る研究を展開しました。

主な著作

海野氏は、その研究成果を多くの著書や論文として発表しています。単著としては、研究活動の一端を記録した『知的練達をめざして』（1985年）や、長年の社会的ジレンマ研究を集約した『社会的ジレンマ：合理的選択理論による問題解決の試み』（2021年）があります。また、社会学の研究方法論に関する共著も多数あり、安田三郎との『社会統計学（改訂2版）』（1977年）、原純輔との『社会調査演習』（1984年）は、この分野の基本文献として広く読まれました。

数理社会学の理論的展開にも積極的に関わり、原純輔らとの共編著として『数理社会学の現在』（1985年）、『数理社会学の展開』（1988年）を刊行し、国内における数理社会学の研究を牽引しました。その他、盛山和夫との『秩序問題と社会的ジレンマ』（1991年）、片瀬一男との『<失われた時代>の高校生の意識』（2008年）など、様々な社会現象に数理的・論理的アプローチを適用した研究を発表しています。

また、海外の重要な研究を日本に紹介する翻訳活動も精力的に行いました。レイモン・ブードン『社会学のロジック』（共訳、1978年）、トマス・ファラロ『数理社会学』（分担訳、1980年）をはじめ、社会統計学や合理的選択理論に関する多数の翻訳を手がけています。近年では、『数理社会学事典』（2022年）、『環境社会学事典』（2023年）において編集顧問を務めるなど、専門分野の知見の普及と体系化にも貢献しています。

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