海陸軍刑律

海陸軍刑律とは

海陸軍刑律（かいりくぐんけいりつ）は、日本の軍事司法に関する重要な法典であり、1871年に裁可、1872年に頒布されました。この法律は、日本初の近代的な軍刑法として位置付けられ、陸軍刑法や海軍刑法の制定前に適用されていました。全204条からなり、士族によって編成された軍隊の規律の維持を目指すもので、西周によって起草されたとされています。特に、江戸時代の武家法や律の影響を受けている点が特徴的です。

制定の背景

廃藩置県後、各地の士族たちが編成した軍隊において規律を確立し、将来の軍制の基礎を築くため、海陸軍刑律は制定されました。他の近代的刑法と比較すると、その成り立ちはフランス法を中心にしたヨーロッパの法典とは異なり、独自の日本の歴史的文脈に基づいています。これは、新律綱領に基づいたものであり、当時の日本社会における軍隊の役割や規律の必要性を反映しています。

適用対象

海陸軍刑律が適用されるのは「軍人軍属」と定義され、軍人とは、海陸軍の将校、下士、兵卒、武学生や軍医官、会計書記などが含まれています。また、軍属は、様々な軍関連の業務に従事する者たちであり、法律の範囲は広範囲に及びます。これは、単なる軍人だけでなく、軍と関連する様々な職種の規律や行為をも規制するものであり、軍に関わる全ての人々を対象としている点が重要です。

犯罪類型

海陸軍刑律においては、犯罪類型として9つのカテゴリが設けられています。具体的には、謀叛律、対捍徒党律、奔敵律、戦時逃亡律、平時逃亡律、兇暴劫掠刑律、盗賊律、錯事律、詐偽律となっており、それぞれに様々な犯罪行為に対応する条文が設けられています。特に、対捍徒党律は抗命罪を示し、錯事律は多岐にわたる過誤を規定するといった特徴があります。このように、軍隊内部の規律を守るために取り決められた様々な犯罪の定義が含まれています。

刑罰制度

海陸軍刑律では、将校に対しては自裁や奪官、回籍、退職、降官、閉門といった6種類の刑罰が規定されています。自裁は死刑に相当し、官を免ぜられた後に切腹が命じられる場合があります。また、奪官は官を奪う刑で、終身にわたって国家文武の官員に補されなくなる刑です。一方、下士や兵卒に対しては死刑、徒刑、放逐、禁錮などが規定されています。

歴史的意義

海陸軍刑律は、その制定当初から多くの重要な事件に適用され、特に1878年の竹橋事件ではこの法律が適用されました。この事件では、複数の兵卒に対して死刑や準流刑、徒刑の判決が下されるという事例が生じました。これにより、海陸軍刑律の存在意義やその運用の実際が広く知られることとなりました。

まとめ

海陸軍刑律は、日本の軍事史において極めて重要な位置を占める法律であり、近代的な軍刑法の基礎を築いたものです。今日においても、その影響は少なからず残ると考えられ、軍隊における規律や法律の必要性を再認識させる教材ともなっているのです。

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