涅槃仏

涅槃仏（ねはんぶつ）について

涅槃仏とは、仏教において釈迦が入滅する様子を表した仏像を指します。一般に「寝仏」「寝釈迦像」や「涅槃像」とも呼ばれ、主にタイにある仏教寺院で見ることができます。この像は、釈迦が横たわった姿で、足の裏には宇宙観を表す文様が描かれていることが特徴です。涅槃仏は、釈迦が成仏してから80歳で入滅するまでの説法の姿を象徴しています。

特徴

涅槃仏の多くは、右手を枕にしているか、または手で頭を支える姿をとっています。一般的には頭を北向き、顔を西向きに表現され、この体勢は後に一般の人々が亡くなる際の「北枕」という風習に影響を与えました。

釈迦の像は、誕生時や苦行時、悟りを得た瞬間、説法中など、様々な場面を表現していますが、主に「立像」「坐像」「涅槃像」の三種類に分けられます。立像はまだ修行の途上で、坐像は悟りを開く過程にある姿、涅槃像は全ての教えを遂げ入滅の境地に至る様子を描写しています。

また、涅槃像には目を閉じたものと開いたものがあり、目を閉じている像は釈迦が亡くなった後の姿、反対に目を開いている像は最後の説法中の姿を象徴しているとされます。釈迦は悟りを開いてからの45年間、毎晩1時間この涅槃像の姿で教えを説き続けたとも言われています。

事件

1988年、ソニーが自社広告にタイの寝釈迦像を使った際、タイの在東京大使館から強い抗議を受けました。仏教国であるタイの信者にとって崇拝する仏像を商業的に利用することは侮辱と受け取られ、ソニー側はその映像があくまでフィクションであると説明しましたが、最終的には放送を中止する運びとなりました。

仏涅槃図について

仏涅槃図とは釈迦の入滅をテーマにした絵画で、釈迦が右脇を下に横たわり、菩薩や羅漢、信者などが彼を囲んで悲しむ様子が描かれています。この絵画には、周囲に咲くサラソウジュの木が描かれることが多く、通常は8本の幹が表され、これが仏教の八正道を象徴するとも言われています。涅槃会などの供養の際に用いられた本作は、日本の平安時代から存在し、高野山金剛峯寺に所蔵されるものが最古の例とされています。

また仏涅槃図は、鎌倉時代や室町時代の作品が多くあり、特に鎌倉後期以降は中国の宋元画の影響を受けたものが見られます。

有名な涅槃仏のある寺院・史跡

涅槃仏が見られる有名な寺院や史跡も多く存在します。タイのワット・ポーやワット・ヤイチャイモンコン、日本の法隆寺、南蔵院などに涅槃仏があり、特に南蔵院の涅槃仏はブロンズ製として世界最大級です。また、ミャンマーには映画『ビルマの竪琴』に登場する全長55mの涅槃仏があるシュエターリャウンパゴダも名高いです。

このように、涅槃仏は仏教の重要な象徴であり、その文化的背景や影響は古来より広がってきました。

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