消えたタンカー

消えたタンカー

『消えたタンカー』は、西村京太郎氏による長編推理小説であり、1975年に光文社から刊行されました。本作は、人気シリーズ「十津川警部シリーズ」に登場する十津川省三が主人公を務める、シリーズ第4作にあたります。

この作品は、第29回日本推理作家協会賞長編部門にノミネートされるなど、高い評価を受けています。作者自身も、自身の代表作の一つとして、自選ベスト5に選出しています。

概要と解説

本作は、初期の海洋ミステリー作品群の流れを汲む作品です。インド洋上でのタンカー炎上・沈没という衝撃的な事件を発端に、物語は日本国内はもとより、沖縄、ブラジル、南アフリカ共和国へと舞台を広げ、壮大なスケールで展開します。

また、本作は後の「消失もの」と呼ばれる作品群の先駆けともなっています。

物語の展開として、前作で警部であった十津川が、本作では警部補に戻っている点が特徴的です。

ストーリー

インド洋上で、大量の原油を積載した巨大タンカー「第一日本丸」が炎上し、沈没するという大事件が発生します。船長を含む6名は救出されましたが、残る26名の生死は不明のまま、捜索は打ち切られてしまいます。

数日後、救出された船長の宮本が自宅から散歩に出たまま行方不明となり、翌朝、変死体で発見されます。さらにその翌日、警視庁に第一日本丸の生存者6名を皆殺しにするという予告状が届き、事態は急展開を迎えます。

十津川警部補は捜査を開始し、宮本がブラジル移住を計画していたものの、家族に打ち明けられずに断念していた事実を掴みます。一方、残りの生存者たちは、なぜか全員が東京から逃走していました。

逃走した生存者たちは次々と殺害されていきます。一等航海士の佐藤は高速道路上で狙撃され、事務長の辻は旅行先の温泉地で殺害されます。二等航海士の河野は、クルーザーで南米へ向かう途中で爆殺されます。

十津川警部補は、水夫長の小島が家族とともに沖縄へ向かったと推理し、沖縄県警に協力を要請します。また、犯行の背景に強い怨恨があると感じた十津川は、第一日本丸の事故で死亡した26名の船員の中に、今回の犯行に及んだ者がいるのではないかと推理します。

そして、26名の中から銃の扱いに慣れている人物を割り出し、そのうちの一人である甲板部員の赤松淳一が、事件に関与している可能性が浮上します。

沖縄で小島一家の警護にあたっていた警察でしたが、赤松に似た大学生の事故死をきっかけに警護が手薄になった隙を突かれ、小島夫妻は射殺されてしまいます。

十津川警部補は、赤松が与論島を経由して鹿児島へ逃亡したと推理しますが、既に手遅れでした。その後、八王子市内で赤松と思われる男の死体が発見され、事件は終結したかに見えました。

しかし、十津川警部補は、赤松を犯人とするにはいくつかの矛盾点があることから、事件はまだ終わっていないと断言し、単独で再捜査を開始します。

登場人物

警視庁捜査一課
十津川省三
亀井定雄
捜査一課長
その他
宮本健一郎：第一日本丸の船長
辻芳夫：第一日本丸の事務長
竹田良宏：第一日本丸の船医
佐藤洋介：第一日本丸の一等航海士
河野哲夫：第一日本丸の二等航海士
小島史郎：第一日本丸の水夫長
赤松淳一：第一日本丸の甲板部員、元自衛隊員
鈴木晋吉：第五白川丸の船長
日高京助：中央新聞のサンパウロ特派員
玉城利夫：沖縄県警の刑事
若松和之：沖縄に旅行に来ていた大学生
望月英夫：黒のカローラの持ち主

テレビドラマ化

本作は、過去に2度テレビドラマ化されています。

1981年：『火曜サスペンス劇場』で放送。中野良子主演。
* 2013年：『月曜ゴールデン』で放送。渡瀬恒彦主演。

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