涼月 (駆逐艦)

駆逐艦 涼月：激戦を生き抜いた不沈艦の生涯

涼月（すずつき）は、日本海軍が建造した秋月型駆逐艦の3番艦です。艦名は「さわやかに澄みきった秋の月」を意味し、その名にふさわしい美しい響きを持っています。太平洋戦争において、輸送作戦や護衛任務に従事し、数々の激戦を経験しました。

概要

涼月は、1942年12月下旬に三菱長崎造船所で竣工しました。秋月型駆逐艦は、対空能力を重視した設計が特徴で、涼月もその例に漏れません。1943年1月には第十戦隊麾下の第61駆逐隊に編入され、姉妹艦である初月や若月と共に、輸送作戦や護衛任務に従事しました。

1944年1月、ウェーク島へ向かう特設巡洋艦赤城丸を護衛中、高知県沖合でアメリカ潜水艦の魚雷攻撃を受け、艦の前部と後部を失う大破に見舞われました。この攻撃で、第61駆逐隊司令や涼月艦長を含む多数の乗組員が戦死するという大きな被害を受けました。応急修理後、呉海軍工廠で半年以上の修理を受け、同年10月に戦列に復帰しましたが、輸送作戦中に再びアメリカ潜水艦の襲撃を受け、艦首部に被雷しました。

1945年4月、戦艦大和を旗艦とする第一遊撃部隊の一員として沖縄突入作戦に参加しましたが、坊ノ岬沖海戦で被弾し大破、多数の死傷者を出しました。応急修理状態のまま防空砲台となり、終戦を迎えました。

特徴

涼月の最大の特徴は、1944年1月の被雷大破時に艦首を亡失し、修理時に新造した艦首が、それまでの秋月型の丸みを帯びた形状とは異なる直線的な形状になったことです。特に角ばった艦橋は、他の秋月型、冬月型、満月型には見られないもので、未成に終わった清月以降の設計図によるものと考えられています。

また、狭義の秋月型で唯一、艦橋左右に機銃台を設け、25mm機銃3連装を装備していました。最大で25mm機銃3連装を7基装備していたと考えられています。

艦歴

涼月は、1940年3月15日に三菱重工業長崎造船所で起工され、1942年12月29日に竣工しました。竣工後は、横須賀鎮守府部隊に編入され、機銃増設工事などを受けました。その後、第三艦隊、第十戦隊に編入され、輸送作戦や護衛任務に従事しました。

1945年4月の坊ノ岬沖海戦で大破した後は、応急修理状態のまま防空砲台となり、7月5日付で予備艦となりました。終戦後は、他の駆逐艦と共に北九州港の防波堤として利用されました。

不沈艦伝説とその終焉

涼月は、太平洋戦争中に三度の大規模な損傷を受けましたが、その都度生還したことから「不沈艦」と呼ばれるようになりました。しかし、その生涯の最後は、福岡県北九州市若松区若松港の防波堤として、他の駆逐艦と共にその姿を没することとなりました。現在、その痕跡は完全に埋め立てられ、確認することはできません。

涼月の艦名は、あきづき型護衛艦「すずつき」に継承されています。

歴代艦長

赤澤次壽雄 中佐：1942年9月10日 - 1944年1月10日
瀬尾昇 中佐：1944年1月10日 - 1944年1月16日戦死
天野重隆 大佐：1944年7月7日 - 7月10日 （兼務）
杉谷長秀 中佐：1944年7月10日 - 1945年3月10日
* 平山敏夫 中佐：1945年3月10日 - 1945年5月18日

涼月は、その短い生涯の中で、太平洋戦争の激戦を生き抜き、数々の伝説を残しました。その不屈の精神は、現代に生きる私たちにも勇気を与えてくれます。

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