淀野隆三

淀野 隆三 — 日本文学に貢献した文芸評論家

淀野隆三（よどの りゅうぞう）は、1904年4月16日に京都府伏見町で生まれ、本名は三吉です。彼の家族は鉄工所を営んでおり、幼少期から経済的な基盤があったことから、文学の道を志すことができました。彼は京都府立京都第二中学校を卒業後、1922年に京都大学理科を志して進学しましたが、その後、文科へと転科しました。学校時代には野球部にも所属し、特に一高三高戦で三塁手としての活躍が目立ちました。また、三高劇研究会にも参加し、当時の文学仲間である梶井基次郎や中谷孝雄、外村茂と親交を深めました。

1925年には東京帝国大学文学部仏文学科に進学し、そこで梶井基次郎たちが創刊した同人誌『青空』に関わります。淀野は文学の道に進むことに対して父から反対されていましたが、こうした仲間たちとの交流は彼に自信を与えました。特に、彼は文学に対する情熱を持ち続けました。

淀野は、1927年に伊豆湯ヶ島を訪れた際、久しぶりに三高時代からの友人である梶井を見舞い、当時の恋人である政子を伴いました。彼の家族は政子との結婚に反対していましたが、淀野は自らの道を進むことを選びました。彼はこの時に川端康成と出会い、その後長い友情が続きました。

1928年に東京帝国大学を卒業した淀野は、同年に娘・華子を持つこととなります。文筆活動に専念し、法政大学で講師を務めつつ、マルセル・プルーストの作品に魅了され、その部分訳を試み先駆的な作家への道を歩み始めました。また、プロレタリア文学運動にも一時は関与しましたが、梶井の助言により、専門的な研究者になる道を選ぶことになりました。

彼は梶井基次郎の死後、中谷孝雄と共に彼の全集を編纂し、家庭の鉄工業を継ぐために帰郷しました。戦後は、1952年に明治大学の教授に就任し、文学界における地位を固めました。川端康成との家族ぐるみの付き合いも続き、彼は淀野の娘を愛し、華子もまた川端家との親しい関係を保ちました。

1963年から1965年には明治大学人文科学研究所の所長を務め、また1964年には文学部長に昇格します。しかし、1965年に健康を害し辞任。その後、癌を患い、1967年に63歳でこの世を去りました。残された息子の淀野隆はサンケイ新聞の記者として活躍し、1968年には川端康成のノーベル文学賞授賞式にも同行しています。

淀野隆三は、その活動を通じて日本文学の発展に寄与し、多くの著作や翻訳を残しました。特に、プルーストの作品は彼の文学的見識と影響を強く示すものです。また、彼が編纂した著作や仲間たちへの影響は、今日の文芸界においても高く評価されています。淀野の文学への情熱は、今もなお多くの文学愛好者に勇気とインスピレーションを与え続けています。

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