深圳河

深圳河とは

深圳河（しんせんがわ）は、中国広東省深圳市と香港特別行政区の境界を流れる河川です。珠江デルタに属し、梧桐山を源流として南西に流れ、后海湾（深圳湾）を経て伶仃洋に注ぎます。全長約37kmで、香港最長の河川です。

1997年の香港返還以前は、川の南岸がイギリス領香港でしたが、返還後は川の中央が境界線となりました。羅湖橋や福田口岸など、多くの交通インフラが深圳河の上に建設されています。また、沙頭角河や中英街と共に、香港と中国本土の境界を形成する重要な要素です。

深圳河は、かつて「明渓」と呼ばれていましたが、1898年の展拓香港界址専条締結時に現在の名称に改められました。この時、深圳河以南の新界はイギリスに99年間租借され、香港の一部となりました。冷戦時代には、中国本土から資本主義の香港に逃れる人々が深圳河を渡ったため、「中国のベルリンの壁」とも呼ばれることもありました。

地理

深圳河は、一般的に沙湾河と蓮塘河の合流地点である「三岔河」より下流を指します。沙湾河は牛尾嶺（沙頭角河とほぼ同じ地点）を、蓮塘河は深圳市内の梧桐山をそれぞれ水源としています。川は南西方向に流れ、伶仃洋に注ぎます。流域面積は312.5k㎡で、平均勾配は1.1％です。

流域は、深圳側が6割、香港側が4割を占めています。深圳側には、竜崗区の布吉鎮、横崗鎮、平湖鎮や羅湖区などが含まれます。香港側は主に田園地帯です。主な支流として、深圳側には布吉河、福田河、新洲河が、香港側には梧桐河や平原河があります。

気候

深圳河流域は熱帯モンスーン気候に属し、降水は4月から10月の雨期に集中しています。雨期は4月から6月の前期、7月から9月の後期に二分されます。台風や熱帯低気圧の影響を受けやすく、暴風や高潮が発生することがあります。高潮によって后海湾の水位が上昇すると、深圳河にも水が遡り、両岸で洪水が起こることもあります。また、都市化の進展により、雨水が川に流れ込む速度が増し、流速も増大しています。

治水

香港と深圳の共同プロジェクトとして、「深圳河治水プロジェクト」が実施されました。このプロジェクトは、雨期に香港北区で発生する洪水を防ぎ、水質を改善することを目的としています。プロジェクトは三期に分かれており、第一期は1997年、第二期は2000年、第三期は2006年に完了しました。

このプロジェクトでは、蛇行していた河道を直線化し、全長を18kmから13.5kmに短縮しました。また、川幅も拡張され、元朗平原から后海湾にかけての防災能力が大幅に向上しました。これにより、両岸の洪水被害が軽減されました。川の直線化に伴い、皇崗口岸の東側など2カ所で、香港と中国本土の間で土地交換が行われました。

さらに、蓮塘と香園囲の間に新しい境界（口岸）を開発するため、香港政府は治水プロジェクトの第四期を開始しました。この第四期では、深圳河上流の防災機能の向上、既存の国際道路や警備施設の移転が行われました。香港政府は、2012年3月にプロジェクトを開始し、約4億香港ドルの予算を投じ、河川の改善と4.5kmの口岸移転を実施しました。第四期は2017年に完了し、50年に1度の豪雨にも耐えることができるようになりました。

環境への配慮も行われ、自然の河床や河道が可能な限り残され、両岸が緑化されるなど、生態系に配慮した工事が行われました。2013年8月30日には、香港政府と深圳市の人民政府との間で、深圳河の管理に関する協定が締結され、同年末から適用されています。

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