深沢宏

深沢 宏について

深沢宏（ふかざわ ひろし、1931年10月9日 - 1986年8月26日）は日本の歴史学者であり経済学者として知られています。彼の専門は南アジア史であり、特にインドに関する研究を多く行いました。経済学の博士号はラクナウ大学より授与され、その後も一橋大学にて多くの学生を指導し、学問に貢献しました。さらに、経済や歴史に関する著作も多数発表しています。

来歴

山形県酒田市に生まれた深沢は、大連市で小学校と中学校を卒業後、日本に戻り高等教育を受けました。1948年には熊本県立中学済々黌を卒業し、東京商科大学（後の一橋大学）に進学しました。1953年に同校の経済学部を卒業し、その後大学院へと進みました。1956年からはインド政府の給費留学生としてインドに留学し、1960年にはラクナウ大学で博士号を取得しました。彼の研究テーマは「インド近代綿業発達史」であり、この業績が評価されました。

1962年に一橋大学の経済学部で講師としてのキャリアをスタートさせ、その後助教授、教授と昇進を続けました。1983年には経済学部長に就任し、長年にわたり教育と研究に力を注ぎました。この間、東京外国語大学との兼任や、他の大学でも講師を務めるなど、幅広く活動していました。1986年、肝不全により東京都立府中病院で亡くなりましたが、彼の業績は後世にわたって評価されています。彼の訃報はインドの新聞にも掲載され、その影響力の大きさを示しています。

受賞歴と学問への貢献

深沢は1972年に『インド社会経済史研究』を著し、この業績により日経・経済図書文化賞を受賞しました。また、1986年には従四位に叙され、その功績が公式に認められました。彼はまた、オックスフォード大学の出版局による著作『The Cambridge Economic History of India, 2 Vols』に日本人として唯一の執筆者として参加し、国際的にも評価されています。

彼が指導した学生たちの中には、南アジア経済史に特化した学者や中東史学の専門家もおり、深沢の教育が多くの優秀な研究者を輩出することに貢献したことがうかがえます。中には、一橋大学名誉教授である加藤博や谷口晋吉、明治学院大学教授の大木昌などが含まれています。

著作

深沢宏の著書には、1972年の『インド社会経済史研究』や、1986年には『インド断章』があり、彼の研究成果を後世に伝える重要な一冊となっています。また、彼の遺稿集として1997年に出版された『インド農村社会経済史の研究』も研究者間で評価されています。さらに1998年には、オックスフォード大学出版局から『The medieval Deccan: peasants, social systems and states, sixteenth to eighteenth centuries』が発表され、英語圏でもその業績が知られるようになりました。

翻訳としては、マックス・ウェーバーの著作『ヒンドゥー教と仏教: 世界諸宗教の経済倫理2』を1983年に発表し、東洋経済新報社から刊行されました。

深沢宏は、その独自の視点と深い洞察力を持って、経済学と歴史学の橋渡しをした学者でした。彼の研究は、インドの社会経済史を理解するための基盤を築き、今もなお研究者たちに影響を与え続けています。

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