深発地震

深発地震とは

深発地震とは、地球の地下深くで発生する地震のことです。一般的に、震源の深さが200kmを超えるものを指します。これらの地震は、プレートテクトニクスの影響を強く受けており、特に海洋プレートがマントル内に沈み込む際に発生することが多いです。深発地震は、その発生メカニズムや地震波の伝わり方に特徴があり、浅発地震とは異なる現象を引き起こします。

深発地震の定義

深発地震の定義は明確に定められているわけではありませんが、一般的には以下の様に分類されます。

浅発地震: 震源の深さが約60kmまでの地震
稍深発地震: 震源の深さが約60kmから200kmまでの地震
深発地震: 震源の深さが約200km以深の地震

深さ500kmから670kmの間で多く発生しますが、670km以深ではほとんど発生しません。ただし、一部の特殊な地域では、それよりも深い場所で発生することもあります。

深発地震のメカニズム

深発地震は、プレートが沈み込む場所でのみ発生します。沈み込んだプレート（スラブ）内部の応力によって引き起こされると考えられています。

深発地震面

深発地震が発生する場所は、地下で緩やかなカーブを描く面状に分布しており、これを「深発地震面」と呼びます。この深発地震面は、1927年に日本の地震学者である和達清夫によって発見され、その後、アメリカのヒューゴー・ベニオフも同様の観測結果から深発地震の存在を予見しました。

現在では、この深発地震面は「和達-ベニオフ帯」と呼ばれることが多くなっています。

プレートテクトニクスとの関連

プレートテクトニクス理論によれば、海洋プレートは海溝でマントル内に沈み込みます。この沈み込むプレートが、深発地震の発生と深く関係しています。プレートが沈み込む際に、プレート内部や周辺に大きな応力がかかり、それが解放される際に地震が発生すると考えられています。

深発地震発生のメカニズムに関する説

深発地震の発生メカニズムには、複数の説があります。かつては、沈み込むプレートの温度低下による脆性破壊が原因と考えられていましたが、現在では以下のような説が有力です。

相転移説: マントル深部における鉱物の結晶構造の変化が地震を引き起こすという説。特に、深さ約500km付近と660km付近で起こる鉱物の相転移が関係していると考えられています。
アモルファス化説: 結晶質の物質が非晶質化することで発生する説。
脱水脆性化説: プレート内の含水鉱物からの脱水反応が、プレートの摩擦強度を低下させ地震を引き起こすという説。

深発地震面の種類

深発地震面には、いくつかの種類があります。

二重深発地震面: 東北地方の太平洋側などで見られる、二重に並んだ深発地震面。上面では圧縮力、下面では引っ張る力が働いていると考えられています。
断裂した深発地震面: ニューヘブリディーズ海溝やペルー・チリ海溝などで見られる、深さ300km付近で途切れ、600km付近で再び現れる深発地震面。スラブの断裂や、地震が発生しない原因があると考えられています。
垂直な深発地震面: マリアナ海溝で見られる、ほぼ垂直に地球の中心に向かって伸びる深発地震面。
短い深発地震面: アリューシャン海溝や南海トラフで見られる、深さ200-300km程度までの短い深発地震面。

深発地震の観測

深発地震は、P波が地表で反射したpP波が明瞭であるという特徴があります。P波とpP波の到達時間差から、震源の深さを概算できます。

深発地震の地震波は、プレートに沿って伝わりやすく、マントル中を伝わる際は速度が速いという特徴があります。そのため、震源の直上よりも離れた場所で大きな揺れとなることがあります。

深発地震と異常震域

地震波の伝わり方や地盤の違いによって、震源の直上が最も強い揺れとならず、離れた場所で最も強い揺れを観測することがあります。この現象を「異常震域」と呼びます。深発地震では、この異常震域が起きやすいとされています。

深発地震の例

過去に発生した主な深発地震の例を以下に示します。

1970年：コロンビア地震 (Mw 8.0, 深さ645km)
1994年：ボリビア深発地震 (Mw 8.2, 深さ630km)
2013年：オホーツク海深発地震 (Mw 8.3, 深さ約600km)
2015年：小笠原諸島西方沖地震 (Mw 7.9, 深さ681km)

これらの地震は、深発地震の代表的な例であり、その規模や発生場所、被害状況などから、深発地震の特性を理解する上で重要な情報を提供しています。

深発地震の被害

深発地震は、浅発地震に比べて被害が少ない傾向があります。しかし、マグニチュード7以上の規模になると、地表でも強い揺れを観測し、被害が発生することもあります。

また、深発地震は津波を引き起こすことはほとんどないとされています。ただし、1994年のボリビア深発地震のように、震源が非常に深いにもかかわらず、死者10人の被害が発生した例もあります。

緊急地震速報について

日本では、深さ150km以深の地震は緊急地震速報の対象外となっています。これは、大きな揺れに繋がる可能性が低いことや、震度予測が難しいことが理由です。

深発地震と浅発地震の関連性

一部の研究者は、深発地震が浅発地震の前兆となる可能性を指摘しています。例えば、関東地方や十勝沖地震では、浅発地震の前に深発地震が増加していたという事例があります。

まとめ

深発地震は、地球内部の深い場所で発生する地震であり、そのメカニズムや特徴は浅発地震とは異なります。プレートテクトニクスの理解を深める上で重要な現象であり、今後の研究によって、その発生メカニズムや影響がさらに解明されることが期待されます。

もう一度検索