深谷通信所

深谷通信所

概要

深谷通信所（ふかやつうしんじょ）は、かつて神奈川県横浜市泉区の和泉町および中田町に置かれていた、在日アメリカ海軍の基地でした。その面積は773,747平方メートル、およそ77ヘクタールに及びます。この施設は、もともと旧日本海軍が通信拠点として使用していた土地・建物を、第二次世界大戦の終結に伴ってアメリカ海軍が引き継ぎ、管理・運用していたものです。敷地全体が国有地であり、アメリカ海軍厚木航空施設司令部の管理下に置かれていました。

日米合同委員会で合意された正式名称は「深谷通信所」でしたが、地域では「戸塚無線送信所」とも呼ばれていました。これは、接収が行われた当時にこの地域が横浜市戸塚区に属していたことに由来します。

旧日本海軍時代に電波干渉を防ぐために円形状に用地が取得されており、アメリカ海軍もその独特な円形の敷地形状をそのまま引き継ぎました。接収後、アメリカ海軍は敷地の中心部分をフェンスなどで囲んだ「囲障区域」とし、事務所や通信アンテナといった主要な施設を設置して、関係者以外の立ち入りを厳しく制限していました。一方、囲障区域の外側では、一部が地域住民に開放され、野球場やゲートボール場、菜園として利用が許可されていました。また、敷地内を神奈川県道402号（かまくらみち）が通り抜けており、一般の車両や歩行者の通行が可能でした。県道沿いにはバス停も設けられ、地域交通の一部として機能していました。

この通信所は主に電波の送信機能を担っており、受信機能は同じく横浜市内にあった上瀬谷通信施設（横浜市旭区・瀬谷区）が担っていました。

返還の経緯

衛星通信技術の発展に伴い、深谷通信所の送信機能は他の施設へと集約が進みました。これにより、深谷通信所の部隊は撤退し、施設は次第に使用されなくなっていきました。こうした状況を受け、日米合同委員会において、当施設を含む土地全体をアメリカ側から日本へ返還する方針が2004年10月18日に合意されました。その後、返還の準備が進められ、2014年6月末までに施設を含めた土地全体の返還を完了させることが決定しました。計画通りに手続きが進められた結果、2014年6月30日に敷地全体が日本政府へ返還されることとなりました。

沿革

深谷通信所の主要な出来事は以下の通りです。

1945年9月2日：旧日本海軍の通信施設をアメリカ海軍が接収し、管理下に置く。
1970年12月1日：施設敷地の一部が地域住民の耕作地として利用許可される。
2004年10月18日：日米合同委員会において、施設を含む土地全体を日本へ返還する方針が合意される。
2014年6月30日：深谷通信所を含む土地全体がアメリカ側から日本政府へ全面返還される。

返還後の土地利用

深谷通信所の返還後、横浜市はこの広大な跡地の活用計画に着手しました。2018年2月28日には「深谷通信所跡地利用基本計画」が発表されています。この計画は「緑でつながる魅力的な円形空間」をテーマに掲げ、敷地の特徴である円形を活かした整備を目指しています。具体的には、デザイン性の高いスポーツ施設を中心とした公園の整備、敷地の外周道路の改良などが検討されています。さらに、周辺道路との接続を強化し、地域全体の交通利便性を向上させることや、災害時における防災拠点としての機能を持たせることも視野に入れられています。

この跡地は、約70年ぶりに日本の管理下に戻り、今後、地域住民にとって新たな緑豊かな交流・活動拠点として生まれ変わることが期待されています。

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