淵辺義博

概要

淵辺義博（ふちべ よしひろ）は、南北朝時代に活躍した武将で、相模国の地頭として知られています。彼の通称は伊賀守で、武蔵七党の一門である横山氏に由来する淵辺氏の一員です。生年は不詳ですが、建武2年（1335年）に命を落としました。彼の生涯は、歴史的な荒波の中で展開され、特に護良親王との関わりや龍退治にまつわる伝説が印象的です。

生涯の経緯

元弘3年/正慶2年（1333年）、鎌倉幕府は足利尊氏や新田義貞の連携によって滅び、その後に後醍醐天皇が建武の新政を始めました。この時期、関東における支配を確保するために鎌倉将軍府が設置され、足利直義がその執権として権力を握りました。義博は直義の家臣として鎌倉で活動していました。

建武元年（1334年）の冬、護良親王が父である後醍醐天皇との対立により捕らえられ、東光寺に幽閉されます。義博はその後、直義の命令で護良親王を暗殺する任務を受けました。直義は、反乱を引き起こした北条時行の勢力が増す中で、親王が時行の旗印となることを懸念しました。これに対抗するため、義博は護良親王の暗殺に乗り出しました。

暗殺の際、義博は親王との格闘に苦しみながらも最終的にその首を取ります。しかし、親王の首は生きているかのように瞳を開き、義博はその姿に恐れをなして、首を近くの藪に捨ててその場を後にします。この出来事は後に「御構廟」として伝承され、現在もその場所に榎木が残っています。

直義はその後、時行の軍勢によって鎌倉を占領されるものの、尊氏と共に鎌倉を奪還しました。しかし、尊氏は建武政権から独立し、後醍醐天皇は新田義貞に尊氏追討を命じます。義博もその戦いに参加しましたが、最終的には戦死の運命を辿りました。

伝説

義博にまつわる伝説は、彼の名を後世に残す重要な要素となっています。特に次の2つの伝説が語り継がれています。

護良親王にまつわる伝説

義博は親王を哀れんで命を助ける決断をしたと言われています。彼は親王を宮城県の石巻市に逃がし、その際には妻子と別れる苦渋の選択をしたと語られています。別れの場所は現在の相模原市と町田市の境にある境川の別れ橋とされており、その近くには「縁切り榎木」が今も存在しています。

龍退治の伝説

淵辺義博は境川に住む大きな龍を退治したという伝説もあります。この龍は村を荒らしていたため、義博は部下と共に戦い、見事に龍の目を矢で射抜いたと伝えられています。龍の体は、その後3つに分かれて飛び散り、各地に寺院が建立されたとされています。現在も残る龍胴寺は、その伝説を受け継いでいます。

結語

淵辺義博の生涯は、南北朝時代の動乱と矛盾に満ちた歴史の中で、多くの物語と伝説を生み出しました。彼の勇敢な行動とその後の伝説は、今でも地域に深く根付いており、時代を超えて人々に語り継がれています。

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