添元

添元（てんげん）とは

添元は、明代にエセン・ハーンが樹立したとされる後元（または北元）政権において用いられたとされる私年号です。1453年に建元されたとされていますが、その末年については、1454年、1455年、1457年という複数の異説が存在し、確定には至っていません。また、年号そのものの存在を疑う見解も存在しており、その実態は謎に包まれています。

添元の背景

エセン・ハーンは、明朝に対して優位に立ち、独自の政権を確立しようとしました。その一環として、独自の年号である「添元」を制定したとされています。これは、明朝からの独立と、自らの権威を示すための行為であったと考えられます。

添元の史料における記述

添元に関する史料は限られており、主に以下のものからその存在が推測されています。

『明史』巻328　列伝第216　外国9　瓦剌：この記述には、エセン・ハーンが自立し、その際に「添元元年」を用いたという記述があります。
『明英宗実録』巻234：この史料には、添元という年号が直接的には記されていませんが、同時代の出来事に関する記述が残されています。

添元の異説

添元の末年については、複数の説が存在しています。これらの異説は、史料の解釈や、年代の特定に関する見解の相違によって生じています。

1454年説：エセン・ハーンの死没年と関連付けられ、この年を添元の末年とする説です。
1455年説：史料の解釈によっては、1455年が末年とされる場合があります。
1457年説：比較的有力な説であり、この説を採用する研究者もいます。

また、添元は「天元」と発音が似ていることから、「天元」との混同や誤記ではないかという指摘もされています。

添元の存在への疑義

一部の研究者の間では、添元という年号自体が本当に存在したのかどうかについて疑問が呈されています。これは、添元に関する史料が少ないことや、年号の存在を示す確実な証拠が不足していることに起因します。また、「天元」との混同説も、この疑義を補強する一因となっています。

まとめ

添元は、明代のエセン・ハーンが使用したとされる謎に包まれた私年号です。その存在自体が議論の対象となるなど、歴史研究における解釈の難しさを表しています。今後の研究によって、添元の実態が解明されることが期待されます。

参考資料

『明史』巻328　列伝第216　外国9　瓦剌
『明英宗実録』巻234
鍾淵映『歴代建元考』巻頭「歴代建元類考」
羅福頤「北元官印考」『故宮博物院院刊』1979年第1期
李崇智　『中国歴代年号考　修訂本』（北京：中華書局，2001年1月）
* 鄧洪波編　『東亜歴史年表』（台北：台湾大学出版中心，2005年3月）

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