清作の妻 (1965年の映画)

清作の妻：愛と犠牲の物語

1965年、大映より公開された増村保造監督作品『清作の妻』。若尾文子と田村高廣の共演により、観る者の心を深く揺さぶるドラマが展開されます。若尾文子は本作で第16回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞、高い評価を得ました。キネマ旬報ベストテンにもノミネートされるなど、その高い評価は当時から注目を集めていました。

本作は、1924年に日活によって既に映画化されている吉田絃二郎の原作を基にしています。時代背景を踏まえた上で、新たな解釈を加え、現代においても通用する普遍的なテーマを提示している点が、本作の魅力となっています。

あらすじ：過酷な運命と衝撃の結末

主人公のお兼は、病気の父と家族の生活を支えるため、年齢の離れた老人と結婚することを余儀なくされます。老人が亡くなった後、父も亡くし、母と共に村へと帰郷します。

村で出会った清作と結婚し、幸せな日々を送っていたお兼と清作。しかし、日露戦争の勃発により、清作は軍へと召集されてしまいます。負傷して帰郷した清作でしたが、再び戦地へ赴こうとしますが、その直前、お兼は衝撃的な行動に出ます。五寸釘でお兼は清作の両目を刺したのです。

この行為により、お兼は服役、清作は軍法会議にかけられますが、戦地への派遣は免れます。服役を終え戻ってきたお兼に対し、清作は盲となったことを嘆くのではなく、お兼の行為によって初めて彼女の苦しみを理解したと告げます。清作の言葉は、これまで社会や戦争という大きな力に翻弄されてきたお兼の心の傷を癒すものとなるのです。

キャストとスタッフ：豪華な顔ぶれ

本作には、若尾文子、田村高廣を始め、小沢昭一、紺野ユカ、穂高のり子など、実力派俳優が多数出演しています。


スタッフ陣も、増村保造監督を始め、新藤兼人（脚本）、秋野友宏（撮影）、山内正（音楽）など、映画界を代表する才能が集結しています。彼らの高い技術と創造性によって、原作の世界観が見事に映像化されています。

作品のテーマ：時代と人間の葛藤

『清作の妻』は、単なる愛憎劇にとどまらず、戦争という時代背景、そして貧困や差別といった社会問題を深く描き出しています。お兼の行動は、一見残酷に見えるかもしれませんが、その背景には、過酷な運命に翻弄されながらも、生き抜こうとする女性の強い意志が感じられます。

清作の盲目となったこと、そして、お兼の行為によって、初めて彼の心の底に潜む弱さや、世間体ばかりを気にする自分勝手さに気づかされます。これは、個人の内面と、社会の圧力との間の葛藤を象徴的に表現しています。

本作は、戦争や貧困といった厳しい現実の中で、それでもなお人間が生きること、愛することの尊さを問いかける、深遠なドラマです。時代を超えて、多くの人々の共感を呼ぶ、不朽の名作と言えるでしょう。

参考文献

国立映画アーカイブ
ぴあ
映画の時間
映画DB

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