増村保造

増村保造：映画とテレビの巨星

増村保造（ますむら やすぞう、1924年8月25日 - 1986年11月23日）は、昭和時代の日本映画界における重要な監督兼脚本家です。山梨県甲府市出身。彼の学歴には、旧制甲府中学校から旧制第一高等学校、そして東京大学法学部を卒業するという華やかな経歴が含まれています。その間、若き日の増村は、同じく東大生だった三島由紀夫と交友を持っていました。

1947年に大映に入社後、助監督としてキャリアをスタートさせ、さらに東京大学文学部で哲学を学び直しました。1952年にはイタリアへ留学し、映画の巨匠であるフェデリコ・フェリーニやルキノ・ヴィスコンティに師事。帰国後、名監督たちのもとで助監督として経験を積み、1957年に『くちづけ』で監督デビューを果たします。

彼の監督スタイルは、特に女性に焦点を当てた作品に特徴付けられます。若尾文子とのコンビによる『青空娘』『妻は告白する』『清作の妻』『赤い天使』など、多くの作品がその代表例です。また、当時の映画界のスター、勝新太郎や市川雷蔵とともに『兵隊やくざ』『陸軍中野学校』といった大ヒット作を手がけ、その名声を高めました。

1958年、増村は映画評論において自身の作風を「近代的人間像を日本映画にうちたてるためのもの」とし、当時の自然主義的な映画に対して厳しい批判を行いました。彼の視点は、一般的な日本映画のスタイルとは一線を画し、より深い人間ドラマを描くことに重きを置いていました。このように、増村は日本映画の新たな方向性を模索していたのです。

大映の倒産後、彼は映画プロデューサーの藤井浩明、脚本家の白坂依志夫と共に独立プロダクション「行動社」を設立し、『大地の子守歌』や『曽根崎心中』など、力強い作品を次々と世に送り出しました。その後、勝プロとのコラボレーションによる『新兵隊やくざ 火線』など、さまざまなジャンルの映画を手がけました。

1970年代になると、増村はテレビドラマの制作にも携わり、『ザ・ガードマン』『赤い衝撃』『スチュワーデス物語』など、数多くの作品を制作しました。これらの作品は、俗に「大映ドラマ」と呼ばれ、大ヒットを記録することとなります。特に「赤いシリーズ」として知られる作品群は、彼の評価をさらに高める結果となりました。

一方、映画界でも1980年に日本とイタリアの合作映画『エデンの園』を監督。この作品は増村の国際的な視野をも示すものでした。彼はまた、白坂依志夫や新藤兼人と共同で多くの作品を手掛け、名コンビとして知られていました。

1986年11月、突如として脳内出血により62歳の若さでこの世を去ります。戒名は、影光院演応保真居士。増村の残した作品群は、今なお日本映画界において色あせることなく、多くの人々に愛され続けています。彼の監督としての才能と独自の感性は、後世の映画人たちに多大な影響を与えています。

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