清朝皇帝 (映画)

『清朝皇帝』は、アン・ホイ監督による1987年の香港・中国合作映画で、金庸の武俠小説『書剣恩仇録』を原作としています。この映画は、二部構成で展開し、第一部では「紅花党の反乱」、第二部では「シルクロードの王女・香妃」を軸に物語が進行します。原作の物語を基にしつつも、映画独自の解釈や展開が加えられている点が特徴です。

製作当時、中国はまだ開放政策が十分に進んでいない状況であり、香港の映画関係者が中国で撮影を行うことは、台湾との関係から難しい側面がありました。しかし、この映画は中国での大規模ロケーション撮影を敢行し、中国人俳優を起用、さらに女性監督がメガホンを取るという、当時としては非常に革新的な試みを行いました。

日本では、1989年に『清朝皇帝』という邦題で公開されました。当時、原作者である金庸の知名度が低かったため、歴史劇としての側面を強調したタイトルが採用されました。ビデオ版では『風と興亡』というタイトルでリリースされたこともあります。

第一部：紅花党の反乱

物語は、清朝の乾隆帝が、漢民族の秘密結社である「紅花党」から、自身が実は漢民族であるという秘密を記した密書を受け取るところから始まります。この事実が公になれば、清朝の統治が揺らぎかねないため、乾隆帝は紅花党の首領を殺害します。その後、紅花党は若き陳家洛を新たな首領に迎え、清朝打倒を目指します。陳家洛は、清軍と他民族間の争いに巻き込まれた際、回族の娘である霍青銅を助け、その縁で紅花党と回族は同盟を結びます。その後、陳家洛は、お忍びの姿の乾隆帝と出会い、二人が兄弟であることを知ります。平和を願う兄の気持ちに心を動かされた陳家洛は、互いに争わないことを誓います。しかし、乾隆帝は紅花党討伐を決意し、紅花党は乾隆帝を拉致、六和塔に立て篭もります。この激しい戦いの中で、陳家洛は皇帝としての兄の苦悩を知り、再度同盟を誓い合うのです。

第二部：シルクロードの王女・香妃

回族の協力を得るため砂漠を急ぐ陳家洛は、そこで美しい娘である香香と出会います。彼女は回族長の次女で、霍青銅の妹でした。宴で香香は陳家洛を婚約者に選び、陳家洛を愛する霍青銅は深く傷つきます。清からの宣戦布告の使者が訪れ、その返答のために清軍に向かった陳家洛と香香は、清軍の罠にはまり砂漠に孤立しますが、霍青銅の活躍で清軍を撃破します。しかし、陳家洛への思いに苦しんだ霍青銅は、竜巻の中に身を投じ、伝説の迷宮に迷い込むことになります。迷宮から脱出した後、霍青銅は妹のために身を引き、陳家洛は香香への愛を誓います。陳家洛は北京へ向かい、冬の宮廷で囚われの身となった香香と再会します。香香は清軍に襲われた回族を救うために捕えられていたのです。陳家洛は、香香と引き換えに紅花党に協力するという乾隆帝の言葉に従うよう香香に求めますが、絶望した香香は自害します。その頃、乾隆帝は氷上球技大会観戦中の紅花党の人々を鉄砲隊で襲撃。全てを失った陳家洛は、共に治世を助けて欲しいと説得する乾隆帝を拒否し、一人西へ旅立つのです。

主要キャストには、陳家洛役をチャン・ドゥオフー、乾隆帝役をター・シーチャン、霍青銅役をリウ・ジア、香香公主役をアイヌイリーが演じています。他にも、グオ・ビーチュアン、ディン・ツイホァ、スン・チェンシーなどの俳優が出演しています。

この映画は、歴史的な背景を基にしながらも、フィクションとしての要素を強く打ち出しており、武俠映画としてのエンターテイメント性を追求した作品です。特に、女性監督が手掛けたことで、それまでの武俠映画とは異なる視点や感性が取り入れられています。映画のクライマックスでの香香の悲劇的な結末は、多くの観客に深い印象を与えました。

『清朝皇帝』は、公開当時からその異色性で注目を集め、現在でも中国映画史における重要な作品の一つとして語り継がれています。映画の公式サイトや、allcinema、KINENOTE、MOVIE WALKER PRESSなどの映画データベースサイト、また、IMDbなどの海外の映画データベースサイトでも詳細な情報を確認することができます。

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