清水哲男

清水哲男：詩と俳句、そしてラジオの軌跡

1938年生まれの清水哲男は、現代日本の詩壇に多大な貢献を果たした詩人です。東京都中野区出身。詩人の清水昶を弟に持ち、父は花火研究者という、文化的な環境で育ちました。東京の高校卒業後、京都大学文学部哲学科に進学。在学中は詩誌『ノッポとチビ』に参加するなど、早くから創作活動に携わっていました。

大学卒業後は編集者として、芸術生活社、河出書房、ダイヤモンド社などを経て、編集の現場で培われた経験は、後の創作活動にも大きく影響を与えたと言えるでしょう。編集者としての経験は、言葉の扱い方、文章構成力、そして出版業界の知識を深める絶好の機会となったはずです。

詩人としての清水哲男は、鋭い感性と洗練された表現力で知られています。初期の詩集から高い評価を受け、数々の賞を受賞。代表作として挙げられる『スピーチ・バルーン』は、作品タイトルにチャーリー・ブラウンやミッキーマウスなど、漫画のキャラクターを用いた、当時としては非常に斬新な試みでした。難解さを排し、平易な言葉で綴られる彼の詩には、深い味わいがあり、読後には独特の苦味が残ると評されています。

詩作活動と並行して、清水哲男は俳句にも造詣が深く、インターネット上で『増殖する俳句歳時記』を運営していました。1997年から2016年にかけて、自身や他の俳句作家が毎日1句ずつ、俳句の鑑賞を書き続けるという、先駆的な試みは、インターネットと俳句という一見異なる文化を融合させた画期的なプロジェクトでした。

さらに、ラジオパーソナリティとしても活躍しました。1979年から12年間、TOKYO FMで『FMモーニング東京』など早朝の情報番組を担当。落ち着いた声と巧みな話術で、多くのリスナーを魅了しました。むさしのFMでもパーソナリティを務めるなど、メディアを通じて幅広い層に作品や考え方を届けていました。

巨人の大ファンとしても知られ、野球チームの監督をオーナー兼任した経験まであります。初めてのスポーツ評は巨人軍についてだったという逸話も残されています。

晩年は腎不全のため、2022年3月7日に84歳で亡くなりました。没後も、その功績を称える会や追悼番組が放送されるなど、多くの人の記憶に深く刻まれています。

受賞歴

1975年：第25回H氏賞（『水甕座の水』）
1986年：第1回詩歌文学館賞（『東京』）
1994年：第2回萩原朔太郎賞、第35回晩翠賞（『夕陽に赤い帆』）
2006年：第1回三好達治賞、第6回山本健吉文学賞（『黄燐と投げ縄』）
* 2019年：第26回丸山薫賞（『換気扇の下の小さな椅子で』）

主な著作

詩集多数、句集として『匙洗う人』『打つや太鼓』、評論・エッセイとして『現代詩つれづれ草』『蒐集週々集』『詩に踏まれた猫』『さらば、東京巨人軍。』『増殖する俳句歳時記』など、多岐にわたる著作を発表しました。

清水哲男は、詩人、編集者、ラジオパーソナリティ、そして俳句の愛好家として、多方面で活躍した稀有な存在でした。その創作活動やメディア活動を通じて、現代文化に大きな足跡を残しました。彼の作品は、これからも多くの人に読み継がれ、その言葉が持つ力強い響きは、人々の心に深く刻まれ続けることでしょう。

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