清涼愛聴盤

『清涼愛聴盤』（せいりょうあいちょうばん）

『清涼愛聴盤』は、シンガーソングライター村下孝蔵によって1990年にリリースされた通算10作目となるオリジナルアルバムです。この作品は、彼がそれまでに発表してきた数々の楽曲の中から選ばれた楽曲に新たなアレンジを施したセルフカバーバージョンを中心に構成されており、加えて4曲の完全な新曲が収められています。

作品の内容と特徴

本作の最大の特徴は、村下孝蔵自身の過去の楽曲に焦点を当て、それらを現代のサウンドで再構築している点にあります。収録曲の大部分が、過去のオリジナルアルバムに収録されていた楽曲のアレンジ版であり、これは彼がこれまでの音楽活動を振り返りつつ、楽曲に新たな生命を吹き込む試みであったと言えます。また、アルバムには「フリーキック」「アンバランス」「終わらない君の夏」「女優 '90」といった書き下ろしの新曲が4曲含まれており、これがアルバム全体に新鮮な彩りを与え、単なるベストアルバムやセルフカバー集にとどまらない「オリジナルアルバム」としての側面を確立しています。

編曲は、村下孝蔵の多くの作品に携わってきた水谷公生が手がけており、彼の洗練されたアレンジワークが、馴染み深い楽曲に新たな魅力を加えています。過去曲と新曲が絶妙に配置されることで、村下孝蔵の音楽世界の広がりと深さを改めて感じさせる作品となっています。

リリース情報

『清涼愛聴盤』は、1990年7月21日に初めてリリースされました。当初はカセットテープとCDの2種類のメディアで発売され、それぞれの規格品番はカセットテープが CSTL1471、CDが CSCL1471 となっていました。

その後、多くのファンからの要望に応える形で、1996年4月1日にはお求めやすい価格設定で提供される「CD選書」シリーズの一つとして再リリースされています。このCD選書盤の規格品番は SRCL3544 です。発売から時を経ても愛され続ける村下孝蔵の楽曲が、手軽に入手できる機会が提供されました。

収録曲

アルバムに収められている全10曲は、すべて村下孝蔵自身が作詞・作曲を手がけており、編曲は水谷公生が一貫して担当しています。過去のアルバムから再収録された楽曲は、すべてこのアルバムのために新しくアレンジされたバージョンです。

以下に収録曲とその概要を示します。

ネコ
オリジナルアルバム『恋文』からの楽曲。新たな編曲で収録。
白い花の咲く頃
オリジナルアルバム『陽だまり』からの楽曲。新たな編曲で収録。
陽炎
オリジナルアルバム『夢の跡』からの楽曲。新たな編曲で収録。
絵日記
オリジナルアルバム『かざぐるま』からの楽曲。新たな編曲で収録。
フリーキック
このアルバムのために書き下ろされた新曲。
夢の地図
オリジナルアルバム『初恋〜浅き夢みし〜』からの楽曲。新たな編曲で収録。
未成年
オリジナルアルバム『何処へ』からの楽曲。新たな編曲で収録。
アンバランス
このアルバムのために書き下ろされた新曲。
終わらない君の夏
このアルバムのために書き下ろされた新曲。
女優 '90
このアルバムのために書き下ろされた新曲。オリジナルの発表年を示す「'90」が付されている。

このように、『清涼愛聴盤』は、村下孝蔵の豊かな音楽的軌跡を新たな形で辿り直すと同時に、その時点での彼の創作の現在地を示す重要な作品と言えるでしょう。過去の楽曲を愛聴してきたファンにとっては新鮮な響きを、そして新曲によって、未来への期待を抱かせる一枚となっています。

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