清瀬英次郎

清瀬英次郎：早逝の才能が彩った映画の世界

清瀬英次郎（きよせ えいじろう）は、1902年12月14日に宮城県仙台市で生まれ、1941年に38歳という若さでこの世を去った映画監督、そして脚本家です。彼の足跡は、大正から昭和初期の日本映画界に、確かな軌跡を残しています。

師との出会いと脚本家としての出発

山形県に本籍を置いていた清瀬は、仙台で幼少期を過ごし、青山学院英文科に進学。ここで、後に彼の師となる伊藤大輔と出会います。伊藤の指導のもと、清瀬は脚本執筆の才能を開花させ、数々の作品を手伝うようになりました。池田義臣監督の『船頭小唄』、若山治監督の『足跡』、松本英一監督の『復讐鬼』など、伊藤が脚本を担当したとされる作品の中には、実は清瀬が執筆したものも含まれていると言われています。

1925年、青山学院を卒業した清瀬は、伊藤のもとを離れ、日活大将軍撮影所時代劇部の脚本部に入社。辻吉郎監督の作品などで脚本を手がけた後、助監督部に異動し、池田富保監督の作品に携わります。1927年には監督に昇進し、『半九郎捕物帳 剣』で監督デビューを果たしました。

監督としての才能開花と戦争の影

監督として頭角を現し始めた清瀬は、『紅雪乱舞』や『銀の蝙蝠』などの作品で注目を集めます。特に山中貞雄は、清瀬の才能を高く評価し、目標にしていたといいます。1934年には日活多摩川撮影所に異動し、トーキーの現代劇にも挑戦しました。

しかし、時代は戦争へと向かいます。1938年、清瀬は海軍への従軍を志願し、「南支従軍」に参加。帰国後も映画製作を続けましたが、1941年に『母系家族』を発表した後、詳しい理由は明らかにされていませんが、急逝してしまいます。

撮影現場での異彩

清瀬は、撮影現場での独特なスタイルでも知られていました。特に嵐山でのロケを好んで行い、日曜・祭日などの人出が多い日にあえて撮影することで、宣伝効果を狙ったとも言われています。稲垣浩によれば、清瀬は秋田弁で指示を出しながらもダンディーな身なりで、活気あふれる現場を作り上げていたといいます。

遺された作品と記憶

清瀬の死後、彼と親交のあった女優・鈴木京子が後を追って亡くなったという噂も流れました。彼の作品は、現在でも東京国立近代美術館フィルムセンターなどで上映されており、その才能に触れることができます。代表作としては、『日活行進曲 曽我兄弟』、『貝殻一平 第一篇』、『赤垣源蔵と堀部安兵衛』、『海の護り』などが挙げられます。

清瀬英次郎は、短い生涯の中で数多くの作品を手がけ、日本映画界に確かな足跡を残しました。彼の作品は、時代を超えて、私たちに映画の魅力を伝えてくれます。

フィルモグラフィ (一部抜粋)

1927年：半九郎捕物帳 剣（監督デビュー作）
1928年：紅雪乱舞
1928年：銀の蝙蝠
1929年：日活行進曲 曽我兄弟
1933年：赤垣源蔵と堀部安兵衛
1938年：アパート交響曲
1939年：海の護り
1941年：母系家族（遺作）

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