辻吉郎

辻吉郎：情熱的な演出で知られた映画監督

辻吉郎（つじ きちろう、1892年8月24日 - 1946年12月9日）は、日本の映画監督、脚本家、そして俳優として、その名を映画史に刻みました。初期には市川芝喜蔵（いちかわ しきぞう）の名で俳優として活動し、晩年には辻吉朗（読みは同じ）と改名しています。秋田県出身の彼は、映画界において、その情熱的な演出と独特なキャラクターで知られていました。

生涯

1892年、秋田県に生まれた辻吉郎は、東京の大成中学校を卒業後、一時公務員を務めましたが、1911年に京都へ移り、日活京都撮影所に入社しました。俳優「市川芝喜蔵」として、牧野省三監督や尾上松之助主演のサイレント[[映画]]に多数出演しました。1915年には、尾上松之助主演の『大前田英五郎』で映画監督デビューを果たし、その後は日活京都撮影所を中心に、職人監督として活躍しました。1929年には、「辻吉朗」に改名しています。

1934年、日活を退社した永田雅一が設立した第一映画社に合流。1942年、戦時統合により日活製作部門が大都[[映画]]、新興キネマと合併し大日本映画製作（後の大映）となったことを機に、松竹下加茂撮影所へ移籍します。1943年には、牧野省三の三男で、自身のチーフ助監督だったマキノ真三と共同で『海賊旗吹っ飛ぶ』を監督しましたが、これが遺作となりました。1946年12月9日、喉頭結核のため54歳で亡くなりました。

人物とエピソード

辻吉郎は「大監督」と称される一方で、秋田弁のきつい人物としても知られていました。撮影現場では、その熱意がしばしば過剰なまでの行動として現れ、俳優を困惑させることもあったようです。例えば、『追分三五郎』の撮影中には、光岡竜三郎が清水次郎長を演じる際、自身の秋田弁訛りで「このスムズのズロツォーが」と言ったところ、辻監督は「これは東海道の話だ！」と激怒したというエピソードが残っています。また、撮影に熱中するあまり、カメラの前に飛び出し、役者の演技を止めてしまうこともあったようです。

日活京都時代には、「傾向映画」と呼ばれる左翼的な作品を多く手掛け、「熱演監督」というあだ名で呼ばれていました。嵐寛寿郎は、辻監督が撮影中に「う～ん、そこそこ!」と身振り手振りでカメラの前に出てしまい、俳優が演技を中断すると「チミイ何で演技せんか、NG、NG!」と怒鳴り散らしていたと語っています。

主なフィルモグラフィー

生涯で133作もの監督作品を残しましたが、現存するフィルムプリントはごくわずかです。主な作品としては、『沓掛時次郎』（1929年）、『追分三五郎』（1935年）、『髑髏銭』前後篇（1938年）、『海賊旗吹っ飛ぶ』（1943年）などがあります。『追分三五郎』と『海賊旗吹っ飛ぶ』は、2005年に東京国立近代美術館フィルムセンターの企画で上映されました。

また、『槍供養』（1927年）は、9.5ミリフィルムのダイジェスト版が発見され、京都府が復元しています。京都府は、この復元された映像ファイルをウェブ上で公開しています。

主な作品:

『大前田英五郎』（1915年） - 初監督作品
『実録忠臣蔵』（1921年） - 出演（市川芝喜蔵名義）
『地獄に落ちた光秀』（1926年）
『槍供養』（1927年）
『金四郎半生記』（1929年）
『傘張剣法』（1929年）
『半身』（1929年）
『沓掛時次郎』（1929年、1932年）
『追分三五郎』（1935年）
『お嬢さん浪人』（1937年）
『髑髏銭』風の巻・雲の巻（1938年）
『海賊旗吹っ飛ぶ』（1943年） - 遺作

外部リンク

Kichiro Tsuji - IMDb（英語）
辻吉郎 - 日本[[映画データベース]]
* 辻吉郎 - allcinema ONLINE

もう一度検索