渋川昔尹

渋川昔尹（1683年 - 1715年）は、江戸時代前期に活躍した江戸幕府の天文方です。父は、同じく天文方の渋川春海であり、幼名は亀之助、通称は図書と名乗っていました。

元禄12年（1699年）には、将軍徳川綱吉に拝謁し、同年には彼の名義で『天文成象』が刊行されました。ただし、この著書は、実際には父・春海の筆による部分が大きいと言われています。父・春海の昔尹に対する期待は非常に大きく、正徳元年（1711年）には春海が隠居し、天文方の地位を昔尹に譲りました。これは、春海が息子の昔尹に後を託し、その才能を高く評価していたことの表れでしょう。

しかし、その期待に応えるかのように見えた昔尹でしたが、正徳5年（1715年）に33歳という若さで急死してしまいます。この突然の訃報は、父・春海に大きな衝撃を与えました。春海自身も、息子の死から半年も経たない同年10月6日に後を追うように病死しました。息子の死が、春海の心に深い傷を負わせ、その生涯を終えるきっかけになったとも考えられます。

渋川昔尹は、短い生涯ではありましたが、父・春海の薫陶を受け、天文方としての道を歩みました。彼が遺した業績は、父の陰に隠れがちですが、春海の期待を一身に受けた才能の持ち主であったことは疑いありません。彼の早すぎる死は、江戸時代の天文学界にとって、大きな損失であったと言えるでしょう。

参考文献
中山茂 編『天文学人名辞典』（『現代天文学講座』別巻）（恒星社厚生閣、1983年） ISBN 978-4-769-90073-3

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