渋谷区立臨川小学校

渋谷区立臨川小学校は、東京都渋谷区広尾一丁目の閑静な住宅街に位置する公立小学校です。渋谷区内では、渋谷小学校、千駄ヶ谷小学校に続いて3番目に長い歴史を持っています。

概要

本校は、明治時代初期に設立された渋谷区でも有数の伝統校です。その設立は、先行して開校した渋谷小学校の影響を受けて計画された面が大きいと考えられています。

学校周辺は教育・文化施設や各国大使館が集まる国際色豊かな地域です。北西には國學院大學、北方向には日本赤十字社医療センターや聖心女子大学、東京女学館などが、東方向には有栖川宮記念公園、フランス大使館、ドイツ大使館などが点在しています。

交通アクセスについては、東京メトロ日比谷線広尾駅が最寄りですが、JR山手線や東京メトロ日比谷線恵比寿駅からも徒歩8分から10分程度とアクセスしやすい立地です。また、校地の南側には明治通りが通っています。

沿革

臨川小学校の起源は、1877年（明治10年）12月1日に「第一大学区東京府第二中学区第29番公立小学臨川学校」として創立されたことに遡ります。創立時の敷地は、現在の渋谷区に当たる豊多摩郡渋谷町大字下渋谷にあった祥雲寺の寺領の一部でした。1877年に寺の所有する畑地が学校用地となりました。

学校設立の経緯については、地元に伝わる話として、「上の渋谷小学校ができたのだから、下渋谷にも学校を作ろう」という機運が地域有志の間で高まり、計画が進められたとされています。建設地や費用についての検討が進められ、地元有志の発起によって計画は順調に進展しました。設立費用は広く寄付によって賄われ、一口30円から最低1円まで、複数名で一口を分担するケースなども含め、総額540円という多額の寄付金が集まりました。これは当時の村の財政規模から見ても相当な額であり、地域住民の学校建設に対する強い熱意を示すものと考えられています。

東京府に提出された設立願書によると、創立時の所在地は「第二中学区内第二九番小学区第七区一小区下渋谷村一七一番地」と記されており、これは現在の所在地とほぼ一致しています。創立以来、場所を変えずに存続しているのは、渋谷区内の小学校では本校だけです。

創立時の敷地面積は、祥雲寺の持畑1200坪のうち305坪でした。うち155坪は敷地として下付され、残り150坪を借地として利用しました。その敷地に建てられた校舎は、約45.5坪の草葺き平屋建てでした。教室は4室あり、12畳の部屋が2室と24畳の部屋が1室で、いずれも床は板張りでした。四方は障子で仕切られていました。教師控室と世話係・子使いの部屋はそれぞれ6畳で、こちらも障子張りでした。こうした形態は、寺子屋が発展したような、明治初期の小学校によく見られるものだったと言われています。

年表で主な歴史をたどると以下の通りです。

- 1877年（明治10年）12月1日：第一大学区東京府第二中学区第29番公立小学臨川学校として創立。
- 1908年（明治41年）1月1日：渋谷町立臨川尋常小学校に改称。
- 1932年（昭和7年）10月1日：東京市編入に伴い、東京市臨川尋常高等小学校に改称。
- 1941年（昭和16年）4月1日：東京市立臨川国民学校に改称。
- 1947年（昭和22年）4月1日：学制改革により、東京都渋谷区立臨川小学校に改称。
- 1977年（昭和52年）6月30日：渋谷区特別研究奨励校として研究発表を実施。

今後の計画

渋谷区は、将来的な教育目標の実現や施設の長寿命化を見据え、「新しい学校づくり整備方針」および「区立小学校と中学校の建て替えロードマップ」を策定しました。臨川小学校は、この計画に基づき、2029年度から2031年度にかけて建て替え工事が予定されています。

教育方針と活動

臨川小学校では、「礼儀正しく思いやりのある人間」「社会に貢献しようとする人間」「個性と創造力豊かな人間」を教育目標として掲げています。児童一人ひとりの健やかな成長を目指し、様々な教育活動を展開しています。

学校の施設を活用した取り組みとして、渋谷区内の全区立小学校児童を対象とした「放課後クラブ」が実施されています。

また、区立小中学校の児童・生徒が利用できる校外学習用の宿泊施設があり、学校使用期間外は社会教育団体にも開放されています。これらの施設として、山梨県南都留郡山中湖村にある山中高原学園と、千葉県南房総市にある富山臨海学園があります。

通学区域と進学先

児童の通学する学校は、原則として住所によって指定されています。しかし、2004年（平成16年）からは学校選択希望制が導入されており、既存の通学区域を維持しつつも、通学区域外の学校を希望することが可能となりました。この制度は、学校ごとの特色づくりを推進し、地域に開かれた学校として区民に選ばれる学校となることを目指しています。

また、通学の距離などを考慮した調整区域が設けられており、保護者の申請により指定校の変更が認められる場合があります。

本校を卒業した児童の主な進学先中学校は、住所指定に基づき、渋谷区立広尾中学校となります。

併設施設

臨川小学校の敷地内には、渋谷区立臨川幼稚園が併設されており、小学校との連携も行われています。

交通アクセス

- 鉄道：JR線または東京メトロ日比谷線の恵比寿駅から徒歩約8分。東京メトロ日比谷線広尾駅。
- バス：都営バス都06系統、広尾一丁目バス停が利用できます。

著名な出身者

臨川小学校からは、各界で活躍する多くの人材を輩出しています。主な出身者としては、声優の大山のぶ代さん、女優の未来優希さん、映画監督の今井正さん、政治家・実業家の糸山英太郎さんなどが挙げられます。

渋谷区立臨川小学校は、明治の創立以来、地域社会の発展と共に歩み、多くの卒業生を送り出してきました。歴史と伝統を受け継ぎつつ、将来に向けた新たな学校づくりが進められています。

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