減勢工
減勢工（げんせいこう）
減勢工は、ダムなどの放流設備において、水の勢いを抑えるために設計された構造物です。放流設備では、上流側と下流側の水面に落差が生じます。そのため、放流される水は、落差に比例した運動エネルギーを持ちます。この状態で水を下流に放出すると、流速が波速よりも大きい射流となり、強い水の流れが河床や河岸を侵食する可能性があります。こうした浸食は、ダムや河川の安全性を損なう恐れがあるため、減勢工が必要になります。水勢を適切に抑えて流速を波速以下にすることで、常流として安全に水を放流することが可能になります。
減勢工の種類
減勢工にはいくつかの種類がありますが、ここでは主に3つの形式について説明します。
1. 跳水式
跳水式は、最も一般的な減勢工のスタイルです。この構造は、斜面から水平面に緩やかに遷移する単純なものです。水が斜面を流れる際に、流れが水叩きと呼ばれる水平面で渦を形成し、射流から常流へと変化します。射流が水底に留まってしまうのを防ぐため、水叩きの終端には段差を設けることもあります。下流の水深が深い場合には、射流が水底に張り付くことが少なくなるため、ゆるやかな傾斜を持たせた傾斜水叩きが用いられます。また、水の流量が大きい場合は、渦を生成するために水叩きに窪みを設けたバケット形水叩きが利用されることもあります。
2. 放水式
放水式では、水を一度空中に放出した後、落下させることで常流の状態にします。この方法には、自由落下式とスキージャンプ式の二つのスタイルがあります。自由落下式では、水を放水口から直接落下させるのに対し、スキージャンプ式では斜面に沿って流下した水を上方に曲げてから落下させます。水面に着水する際には、必要に応じて河床にコンクリートなどで保護を施すことがあります。
3. その他の形式
小規模な堰などでは、衝撃型や噴流拡散型といった他の種類の減勢工も使用されることがあります。これらの方式は、特定の状況や設計要件に応じて選択されます。
参考文献
関連項目
これらの減勢工は、ダムを安全に運用するための重要な構造物であり、正しい設計と施工が求められます。
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