渡会伸

渡会伸（わたらい しん）

渡会伸は、1918年12月13日に秋田県大館市で生まれ、2001年5月28日に逝去した日本映画の録音技師です。その豊かなキャリアの中で、彼は数多くの作品に携わり、特に戦争映画や喜劇、ドラマなど、様々なジャンルにおいて優れた技術を発揮しました。

経歴の概要

1938年、渡会は東宝撮影所に入社し、当初は録音助手としての道を歩み始めました。彼のキャリアにおける中でも重要な出来事は、東宝争議の際に人生労働組合の委員長を務めたことです。この経験は彼にとって大きな転機となり、映画製作の現場での人間関係や技術面での配慮を考える上で大切な学びとなりました。

1957年からは録音技師としての活動を本格化させ、岡本喜八の作品を中心に、独立愚連隊シリーズや暗黒街シリーズなどに関わりました。また、戦争映画の分野でも腕を振るい、記憶に残る作品『太平洋の翼』『日本のいちばん長い日』『激動の昭和史 軍閥』『トラ・トラ・トラ!』など、多くの名作を手がけました。特に、「トラ・トラ・トラ!」に関しては、2001年4月に行われたスタッフ座談会において、黒澤明が降板した前後の状況について詳細に語っています。これにより、彼の技術や製作現場での経験が脚光を浴びることとなりました。

主要作品

渡会伸は、多数の映画に参加しており、その中でも以下の作品が特に有名です。

• - 忘却の花びら（1957年）
• - 大当り三色娘（1957年）
• - 一本刀土俵入（1957年）
• - 喜劇 駅前旅館（1958年）
• - 独立愚連隊（1959年）
• - 暗黒街の対決（1960年）
• - 太平洋の翼（1963年）
• - 日本のいちばん長い日（1967年）
• - 赤ひげ（1965年）

これらの作品は、渡会の録音技術の高さが生かされており、その音響は映像と共に見る者に深い印象を与えます。

受賞歴

渡会伸は1965年に日本映画技術賞録音賞を受賞するなど、その技術が広く評価されています。この受賞は彼にとって重要な栄誉であり、彼のキャリアを代表する成果とも言えます。

参考文献

渡会伸の業績を知るための資料は多く存在し、学習の友社が発行した「サウンド・トラックに生きて――渡会伸さん」と、黒沢明研究会誌の「赤ひげにおける録音技術」などが特に参考となります。また、塩澤幸登氏の著書『Kurosawa: 黒澤明と黒澤組、その映画的記憶、映画創造の記録』も重要な文献として位置づけられています。

最後に

渡会伸は、日本映画に多大な影響を与えた技術者であり、彼の創り出した音響が映画の世界にどれだけの彩りを添えたかは計り知れません。彼の作品は今でも観客に強い訴求力を持ち続け、多くの人々に愛されています。彼の貢献を振り返ることで、日本映画の録音技術の進化を理解する手助けとなるでしょう。

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