赤ひげ

映画『赤ひげ』について

1965年4月3日に公開された日本映画『赤ひげ』は、名監督黒澤明が手掛けた作品で、原作は山本周五郎の小説『赤ひげ診療譚』です。この映画は、モノクロでありながらも185分の長編で、主演は三船敏郎と加山雄三が務めました。

ストーリーの概要

物語は、若き医師・保本登の視点から展開されます。登は3年間の留学を終えて江戸に戻り、幕府の医者になることを夢見ていました。予期せぬ事情で小石川養生所に赴任することになりますが、彼には自らの運命に対する反発心が渦巻いていました。江戸時代後期の医療を背景に、貧しい人々と赤ひげの名で知られる老医師・新出去定との出会いを通じ、登は自身の成長を遂げていきます。

登と赤ひげの関係

小石川養生所での生活は、登にとって困難の連続でした。赤ひげである新去医は、登の奮闘を静かに見守り、時には叱責し、時には励ましの手を差し伸べます。社会に対する目を持つ赤ひげが教えてくれるのは、医者としての腕前だけでなく、患者に対する愛情や人間の尊厳についての深い理解でした。

登は赤ひげから学び、一人の医師として成長する過程を描写することで、視聴者は登の葛藤やその後の変化に感情移入します。登は赤ひげの言葉から、医術の限界を理解し、貧困や無知という社会の構造に目を向けるようになり、人間としての成長の道を踏み出します。

時代背景

映画の背景には、江戸時代中期の医療制度が描かれています。小石川養生所は、実在した医療機関であり、貧しい人々の治療を行っていました。この医療機関は、徳川幕府によって設立され、当時の医療福祉活動を象徴する存在でした。この映画では、医療現場における貧困層への対処が重要なテーマとして扱われており、赤ひげの社会批判も色濃く描かれています。

映画制作の背景

『赤ひげ』の制作には、黒澤が特に力を入れました。シナリオの執筆には2年もの時間がかかり、撮影も約1年半に及びました。映画界での危機を乗り越えるために、黒澤はスタッフ全員の情熱と誠実さを集結させたと語っています。また、この作品は黒澤の成長を物語る重要な作品でもあり、彼の映画作りへの真摯な姿勢を表しています。

受賞歴

『赤ひげ』は第39回キネマ旬報ベスト・テンで第一位を獲得し、また第26回ヴェネツィア国際映画祭で男優賞を受賞するなど、多くの賞を受けています。この映画は、映画ファンや批評家たちにも高く評価され、魅力ある作品となりました。

まとめ

『赤ひげ』は、江戸時代の医療を通じて人間愛や尊厳について描いた作品です。登の成長物語だけでなく、赤ひげの哲学的な言動が映画全体に深い意味を持たせています。観客に強いメッセージを届け、心に残る意義ある作品といえるでしょう。

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