渡辺勉 (野球)

渡辺勉（わたなべ つとむ）は、1949年4月25日に宮城県に生まれたプロ野球選手。主に内野手として、黄金期を迎えていた阪急ブレーブスでプレーした人物である。

宮城県立仙台育英高等学校に進学し、野球部では中心選手として活躍。主軸の三番打者を務めながら、堅実な守備で遊撃手のポジションを守った。高校最後の夏となる1967年、チームは夏の甲子園出場を目指し、宮城県予選を勝ち進んだ。続く東北大会決勝まで駒を進めたが、この大会で対戦した仙台商業高校には、後にプロ野球で長きにわたり活躍する捕手・内野手の八重樫幸雄がおり、熱戦の末に敗れた。これにより、甲子園出場の夢は叶わなかった。

しかし、高校での活躍がスカウトの目に留まり、同年のプロ野球ドラフト会議にて、阪急ブレーブスから5位指名を受け、プロ入りが決定。野球への情熱を胸に、プロの世界へと飛び込んだ。

プロ入り後の数年間は二軍での経験を積んだ後、1968年には若手の登竜門であるジュニアオールスターゲームに選出されるなど、期待の若手として成長を示した。1971年頃からは、控えの内野手として一軍の試合に出場する機会が増え、チームにおける存在感を高めていった。渡辺選手の最大の強みは、内野のほぼ全てのポジション（二塁、三塁、遊撃）を遜色なく守ることができるユーティリティー性にあった。この守備の柔軟性により、様々な状況に応じて起用され、当時の強力な阪急打線を支える堅い守備陣の一員として貢献した。

キャリアの中で特に多くの出場機会を得たのは1970年代半ばである。1975年には、二塁手、遊撃手、三塁手として幅広く起用され、特にシーズン後半の5月以降は先発出場する機会も増加し、約20試合でスタメンを務めた。同年にリーグ優勝を果たし、広島東洋カープと対戦した日本シリーズでは、全6試合に帯同し、主に試合終盤での三塁の守備固めや、ここぞという場面での代走として出場。チームの日本一に貢献した。続く1976年には、自身にとってキャリアハイとなる106試合に出場。この年は主に遊撃手として起用されることが多く、30試合で先発出場を果たした。打撃面では目立った成績を残すタイプではなかったが、その堅実な守備とチームプレーに徹する姿勢は、当時の阪急にとって欠かせない存在であった。

しかし、チーム内の競争激化や若手の台頭もあり、1977年以降は徐々に出場機会が減少していった。限られた出番の中でチームを支え続けたが、プロ野球選手としての岐路を迎え、1979年シーズンを最後に現役を引退することを決断した。プロ生活12年間の通算成績は打率.188、0本塁打、18打点だった。

現役引退後は、第二の人生として野球とは異なる分野に進んだ。大阪に移り住み、ゴルフの世界へ。ゴルフのインストラクターとして活動を開始し、多くの人々にゴルフの指導を行った。

長年にわたり野球に情熱を注ぎ、引退後も指導者として活躍した渡辺勉氏は、2023年5月29日、間質性肺炎のため、74歳でその生涯を閉じた。高校時代に甲子園を目指し、プロではユーティリティープレイヤーとしてチームを支え、引退後も指導者として貢献した人生だった。

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