渡辺政隆

渡辺政隆氏は、1955年生まれの日本のサイエンスライター、翻訳家です。科学史、進化生物学、科学コミュニケーションを専門としており、その分野における深い知識と洞察力で知られています。

学歴と職歴

渡辺氏は、新潟県で生まれ、石川県立金沢二水高等学校を経て東京大学大学院農学系研究科修士課程を修了しました。1985年には東京大学大学院農学系研究科農業生物学専攻単位取得満期退学しています。その後、研究者としてのキャリアをスタートさせ、2002年には文部科学省科学技術政策研究所上席研究官に就任しました。2008年には独立行政法人科学技術振興機構で科学コミュニケーションスーパーバイザー、2009年には同機構のエキスパート（科学コミュニケーション推進担当）を務めました。

2012年1月からは筑波大学教授（広報室サイエンスコミュニケーター）として、科学の普及とコミュニケーション活動に貢献しました。また、文部科学省科学技術政策研究所客員研究官、和歌山大学客員教授、日本大学芸術学部客員教授、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科客員教授などの役職を歴任し、教育と研究の両面で幅広く活躍しました。現在は、東北大学広報室特任教授、同志社大学生命医科学部医生命システム学科特別客員教授として後進の育成に尽力しています。

著書

渡辺氏は、数多くの著書を執筆しており、その内容は進化生物学から科学コミュニケーションまで多岐にわたります。

『ガラガラヘビの体温計 生物の進化と<超能力>をめぐる旅』（1991年）では、生物の進化における驚くべき適応能力を解説しています。
『DNAの謎に挑む 遺伝子探究の一世紀』（1998年）では、遺伝子研究の歴史を振り返り、その進歩を詳細に語っています。
『シーラカンスの打ちあけ話 生きものたちの生態と進化』（2002年）では、古代魚シーラカンスを題材に、生物の進化と生態について興味深い考察を展開しています。
『一粒の柿の種 サイエンスコミュニケーションの広がり』（2008年）では、科学を社会に伝えることの重要性と方法論について論じています。
『ダーウィンの夢』（2010年）や『ダーウィンの遺産 : 進化学者の系譜』（2015年）では、進化論の創始者であるダーウィンの思想と、その後の進化生物学の発展について深く掘り下げています。
『科学で大切なことは本と映画で学んだ』（2021年）や『科学の歳事記 - どんぐりから宇宙へ』（2021年）では、科学の面白さを身近な視点から伝えています。

これらの著作は、科学的な知識を一般の人々にも分かりやすく解説し、科学への関心を高めることに貢献しています。

翻訳

渡辺氏は、翻訳家としても多くの実績があります。特に、進化生物学や科学史に関する重要な著作を翻訳し、日本の読者に紹介しています。

スティーヴン・ジェイ・グールドの著作の翻訳を多数手がけ、『ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生物進化の物語』や『ニワトリの歯 進化論の新地平』など、進化生物学における重要な概念を日本に紹介しました。
リチャード・フォーティの『生命40億年全史』や『地球46億年全史』など、地球史と生命の進化に関する壮大な物語を日本語で読めるようにしました。
* ダーウィンの『種の起源』や『ミミズによる腐植土の形成』を新たに翻訳し、古典を現代に蘇らせる試みにも挑戦しています。

また、科学の啓蒙書として、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』、ファラデーの『ロウソクの科学』などを翻訳しており、科学の知識を広める活動に大きく貢献しています。

専門分野と研究活動

渡辺氏の専門は、科学史、進化生物学、科学コミュニケーションです。特に、進化生物学においては、ダーウィンの進化論を深く研究しており、その思想と現代の進化生物学との関係について考察しています。また、科学コミュニケーションにおいては、科学的な知識を一般の人々に分かりやすく伝えるための方法論を研究し、実践しています。

科学コミュニケーションへの貢献

渡辺氏は、研究者としてだけでなく、サイエンスライター、翻訳家、教育者として、科学コミュニケーションの分野で多大な貢献をしています。科学を一般の人々にも分かりやすく伝えることで、科学への関心を高め、科学技術の発展に貢献することを目指しています。その著作や翻訳は、科学の面白さや重要性を広める上で重要な役割を果たしており、多くの人々に科学の楽しさを伝えています。

渡辺政隆氏は、科学の普及と発展に貢献する、現代において不可欠な知識人と言えるでしょう。

もう一度検索